text by Go Takahashi

※料金等データは2019年6月のものです。

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#ハードな釣りだぜ!
#困難は分かってる   
#でも絶対釣る     
#野性の目が燃えた
 5月20日、我われ取材陣は、外房は勝浦川津、宏昌丸の船上にいた。船長、吉清良輔。仲乗り、田口智秋。外房でヒラマサを狙う、ルアー青物のベテランたちだ。そして、3月に進水式を迎えたばかりの、輝ける新造船。盤石の態勢だった。 なお今回は、ドキュメントタッチで各界のプロフェッショナルを紹介する国営放送の人気番組にインスパイアされているので、句読点が、若干多い。 スガシカオの「プログレス」をBGMに、橋本さとしの声で、読んでほしい。 外房ルアー青物は、いかにもそういう雰囲気の、ドラマチックな夢の釣りだった。 ヨッシーは、今夏にジャッカルから新発売予定の青物用ジグ、バンブルズのプロトタイプで、ヒラマサに挑んでいた。 水深30メートル前後。とりあえず130グラムから始めたけど、軽いな……。潮を感じない。 ジグに手応えを感じれば潮の流れがあるってことだけど、これはなかなか厳しそうだね。 言葉数も少なく、ジグをシャクった。魚からの返信は、なかった。午前6時30分に始まったジギングは、40分ほどでキャスティングへと変わった。 ジャッカルの大型プラグ、ライザーベイト015Pを手にした。仲乗りの田口さんから、こんな言葉を聞いていた。「強いアピールは必要ありません。外房はポイントが限られていて、プレッシャーが高い。水面でバシャバシャと音を立てないほうがいいと思います」 ライザーベイト015Pをキャストするヨッシーの目が、黄色く燃えた。野生動物、ジャッカルの目だった。

 

#チェイス2発!   
#ヤツはいる                     
#…どこにいる?               
#どう引っ張りだす?

 ライザーベイト015Pの強みは、75グラムの重さを生かしての遠投性能と、細身であること、そしてタダ引きで自然なアクションをしてくれること。 ただ、ルアー青物で一般的に使われるダイビングペンシルが水面に浮くフローティングタイプなのに対して、ライザーベイト015Pは沈むシンキングタイプ。リールを巻くことで浮かび上がってくる特性なんだ。 だから上を意識してる魚に対してのアピールは弱いかな、と心配だった。沈むから、止めのアクションが入れられないしね。 でも田口さんの話だと、ライザーベイトにも勝機がありそうだよね。頑張って投げるよ!!「声を出して投げると飛ぶんだよね。セイッ!」 ふざけているようで、ヨッシーは大マジメだった。実際、飛距離が伸び、ヒラマサが反応した。 10時18分、「セイッ!」で投げたライザーベイトが着水するや、ヨッシーが「ン……?」と言った。リーリングを始めると、チェイスがあった。ヒラマサだった。ヤツが、いる──。 さらに10分後、再びヒラマサが気配を見せた。ふざけているようで大マジメな「セイッ!」の後に、ライザーベイトにアタックしてきた。海面に、ヒラマサの気配が立ちこめた。 だが、この日はそこまでだった。午前船で、ヒラマサが姿を見せることはなかった。 1発目はルアーを見切られたかな。2発目は確実に食いにきてたと思う。 ク~ッ、残念だな~ッ! 今回はチェイス自体がオレのライザーベイトへの2発だけ。有効だったのは間違いないんだけど、食わせ切れなかったな~。 やっぱりヒラマサ狙いは夢があるね。ライザーベイトを引いてて「バフッ!」って出た瞬間は、テンション高まったよ! その割に、肩が落ちていた。ヨッシーを含めて、ルアーを投げていたのは3人。午前中を投げとおして、チェイスはヨッシーの2回のみ。敗北だった。

 

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#夢に向かって     
#やるべきことはシンプル
#投げ続けること             
#挑み続けること 

 リベンジを決行したのは、5月30日だった。数日前にシケが襲った後、外房の海は爆発した。宏昌丸でも大型ヒラマサが連発していた。 29日にも軽く海が荒れ、その翌日だ。また、爆発するかもしれない。「今日は釣れるよ」と色めき立つ取材スタッフに、ヨッシーは「そういうの、いらないから」と笑った。「釣れるかも、とか、釣れないかも、とか、そういう予想はいらない。ただ釣るだけ。とにかく釣るんだ。1本をね」 ……カッコよかった。開発中のジギングロッド、バンブルズを手にする姿が、いつも以上に様になっていた。 宏昌丸が、エンジンを止めた。緊張感が高まる。午前船の釣りは、ジギングから始まった。 ヨッシーは、早いジャークと遅いジャークを取り交ぜながら、今夏発売予定の新型ジグ、バンブルズに命を吹き込む。 最初はゆっくり。底近くでジグに気付かせるイメージかな。それから早巻きでジグを追わせる。ヒラマサが「オッ、なんだなんだ?」と反応するようにね。そして再びゆっくり。食わせる間を作るんだ。 もちろん、一定リズムでシャクるワンピッチジャークも有効だ。仲乗りの田口さんも言ってたけど、ヒラマサは気まぐれ。何が正解か分からないから、色いろやってみるべきだよ。 そう簡単に釣れる魚じゃない。ガマンの時間帯がほとんどだ。でも、テンションが下がることはないよ。とにかくルアーが海中になきゃ、絶対に釣れないしね。 いつ、何が起こるか分からない。諦めたら、そこで試合終了だよ。だからオレは休まない。釣り続けるよ! ……ちょっとカッコよかった。そして、本当に休まず、釣り続けた。ジギングもした。キャスティングもした。だが午前中は、チェイスもなかった。だれにも、何も、起こらなかった。 過酷な釣りだ。だがそれが、いつかは報われる。今日かもしれないし、明日かもしれない。だから我われは、挑み続ける。相手は、気まぐれだ。トライし続けなければ、成功もない。

 

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#静寂は破られた
#スリリング                     
#バフッ、ドカン!           
#そしてみんながハッピー

 そのときが、訪れた。 午前船で空振りを食らった我われは、午後船にも乗船した。 ヨッシーは、130グラムのジグをシャクり続け、75グラムのライザーベイトを投げ続けた。

午後1時40分、ヨッシーの拍手と歓声が、宏昌丸の船上に響いた。自分に向けて、ではなかった。ジギングで8キロ級を釣った増渕さんへの、称賛だった。 午後1時40分、ヨッシーの拍手と歓声が、宏昌丸の船上に響いた。自分に向けて、ではなかった。ジギングで8キロ級を釣った増渕さんへの、称賛だった。「おめでとうございます!」。心から祝福しながら、内心では「次こそオレが!」と思っていた。 ヨッシーのジグにも、サワリがあった。根掛かりで回収されてきたカジメに反応し、数本の良型ヒラマサがぞろぞろ着いてくるシーンもあった。跳ねも見られた。 間違いない。この海域には、かなりの数のヒラマサが、いる。何かが、起きそうだった。 15時半過ぎ、良輔船長のアナウンスに、緊張が走った。「右舷も左舷もキャスティングでいこう。うん、潮が流れ始めたよ。これは出そうだ」 そして──。「出たーっ!」。大きな叫び声とともに強いキャスティングロッドがひん曲がり、ジャーッとドラグ音がした。ヨッシーの竿、ではなかった。 落ち着いたファイトの末にキヨさんが釣り上げたのは、尾叉長107センチ、14キロの見事なヒラマサだった。同じときに計3本が上がり、宏昌丸は大いに賑わった。 午前中には、反応がなかったポイントだった。だが良輔船長は、変化を敏感に感じ取っていた。夕刻、同じ場所で、ヒラマサが炸裂した。「時間によってガラリと雰囲気が変わる。何かが違うんですよ。言葉にはできないけどね……」と、良輔船長は言った。野性の読みが、ヒラマサを引き寄せた。 船上のみんなで喜び合えるのがヒラマサ釣り。カッコいいし、デカいし、素直に「釣りたい」と思えるよね。「夢マサ」って言葉どおりだ。 今回、自分は釣れなかったけど、投げてさえいればだれにでもチャンスがある。静かな時間が続いた後に、いきなりズドンと10キロ、20キロ、30キロのヒラマサが食いついてくるかもしれない。このスリルは、病みつきになるね! いや~、疲れた(笑)。でも、すがすがしいよ。

 

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#テンション高まった!

◉キヨさんの14キロも素晴らしかったけど、やっぱり5月30日の午後に船中1本目が釣れたときが一番テンション高まったかな~。20日の午前、そして30日の午前と魚の顔を見てなかったからね。 今回オレはヒラマサに会えなかったけど、会える人もいる。ヒラマサは気まぐれだから、何が釣果を左右したのかよく分からないけど、そこも魅力かな。野生の強い魚を相手にしてるワイルドさに、ワクワクするんだ。


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【ジギングタックル】

ロッド=ジャッカル・BamBlu's(バンブルズ)試作品ロッド=ジャッカル・BamBlu's(バンブルズ)試作品リール=シマノ・ステラSW8000HG シマノ・ツインパワーSW8000PGライン=PE3号 リーダー=50lb・2ヒロ

【キャスティングタックル】

ロッド=キャスティングロッド(8.5フィート)ロッド=キャスティングロッド(8.5フィート)リール=シマノ・ツインパワーSW14000XGライン=PE6号 リーダー=100lb・2ヒロ


外房勝浦川津港

宏昌丸

☎0470・73・1082(詳細は巻末の情報欄参照)

◉料金=ルアー青物・午前1人1万1000円、午後1万円(通しは2万円。氷付き)
◉備考=予約乗合。レンタルタックル2000円

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