★釣りばかレーサー・高木真一インタビュー『隔週刊つり情報連載・沖釣りあっちこっちRound21より

 

★2021シーズンも鈴木亜久里監督率いるARTA(オートバックスレーシングチーム・アグリ)よりSUPER GT・GT300クラスへの参戦が決定した高木真一さん。

 

★昨年はスーパー耐久参戦中に思わぬ事故に見舞われたものの同シリーズでのチャンピオンを獲得、ケガからも順調に回復し、3度目のSUPER GTチャンピオンと最多勝記録更新に向けてリハビリとトレーニング、そして大好きな釣りの日々が始まろうとしている。

 

★インタビューは2020年11月29日、富士スピードウエイにて、聞き手&撮影は沖藤編集長。

 

[前編はこちら]

 

 

 

レースでもあんな感じで
変なこと試すんですか?

【色んなアイデアを試す、という点では、高木さんほど船の上でアレコレやる人は珍しいですよ

高木「はい。ルールの中で可能なら、なんでも試します」

【以前、タチウオ釣りでテンビン仕掛けのオモリをフック付きのメタルジグにして、エサとジグ両方にタチウオ掛けてましたよね?

 

高木「仕立船だから、よーし試してやろうって」

 

【タチウオテンヤだって、流行する以前にすでに東京湾で試して、なぜかちくわとか巻いてたでしょ? 小湊のマルイカ仕立てでは、スピニングタックルでイカメタルやってたし

 

高木「あまりに軽くて、着底する前に移動でしたけど、1杯釣れました」

【レースでも、あんな感じで、変なこと試すんですか?】


高木「しません(笑)。レースでは色いろと経験を積んで、無駄なことをしなくなりました。だから、釣りをしているとき、無駄なことしていると思われてるだろうなあ〜って、いつも思っています」

【たしかに!(笑)

高木「レースでは無茶はできません。でも、釣りなら試せる、それが好きなのかもしれません。釣りに行く前日とか、色いろ考えるとワクワクが止まらなくて、仕掛けとか、道具とか、いっぱいになっちゃうんです」

 

モータースポーツは危険と隣り合わせ。関わる人すべてがプロフェッショナルに仕事をこなす

 

レースはゆずり合い
の本当の意味は?

【そういえば、高木さんのレースにおけるモットーは〝ゆずり合い〟でしたよね?

高木「はい」

その真意は?

高木「レースでは冷静さを失うと、お互い後で損をする場面があるんです。そこで無茶をしない、という意味が大きいですね」

先ほどの、釣りでは無駄を覚悟で色いろ試すけど、レースでは無駄なことをしない、に通じてますか

高木「そうですね。ですからレースは〝ゆずり合い〟」

では、釣りのモットーは?

高木「……全集中かな。あ! だから殺気が出ちゃってダメなのか(笑)」

とにかく腰が低く、釣りのプロにはどん欲に質問する高木さん

 

ポールは取れるのに
勝てない、みたいな釣り

釣りなら淡水から沖まで、小物からマグロまで楽しんでいる高木さんですが、一番好きな釣りは?


高木「色いろありますが、今は、マルイカ釣りです」

では、マルイカ釣りをレースにたとえると?

高木「そうですね……ポールポジションを取れるクルマなのに、決勝では5位、みたいな感じですね。釣りのプロはポールからブッチ切りで勝っているのに、どうしても僕は勝てない」

やはり腕の差が出る釣り、工夫のしがいがある釣りが好きなんですね

高木「基本的に釣りは何でも好きなのですが、たとえばマダイとか、大物は1尾釣れると満足感というか、ゆとりが出ますよね。でも、カワハギとかマルイカって、スタートからフィニッシュまで、全力で燃えるんです。腕の差も出るし、その充実感がとくに好きなんです」

やっぱり負けず嫌いですよね

高木「ですかね。だから、僕の場合は釣りが充実すると、レースも充実するんです。

 

[完]

 

ARTAのほか、監督を務めるBJレーシングでも若手育成に取り組む高木さん

最終戦の決勝グリッドにてスタッフと話す高木さん。自分が走るときよりも緊張?

なのに釣りでは本気か分からないようなヘンな仕掛けを試したり、道具をひっかえ取っかえして結局釣れないことも。写真は2018年冬、イワシがワイヤーで切れないよう、ちくわでカバー。釣れず。

何かヘンなこと(本人はマジメに考えた作戦)を試しているときは雰囲気からしてアヤシイ。写真は2019年のマルイカ釣りにて

2019年初夏。15〜20号のイカメタルで着底しないとみるや、ドラゴンシンカー30号をセット、スピニング直結2〜3本ヅノ仕掛けというあやしいライトスタイルに。まず普通の釣り人は試さないが、本人の中ではセッティングが煮詰まっているらしく自信満々

そして会心の1杯。釣りが充実した2019年はNSX-GT3でチャンピオンに輝いた

レースでは釣りのときのような、極端な変更は試しません、と高木さん。本当かなぁ

関係者をジワジワと巻き込んでいる

2020年のパートナー・大湯都史樹選手(左)と。釣りポーズでお付き合いしてくれた大湯選手は活躍が評価され2021年はGT500クラスへ。19年の福住仁嶺選手に続き、大ベテラン・高木さんとペアを組んだ若手がレース界で飛躍している

2020年SUPERGT最終戦、ARTA NSXはエンジン積み替えで最後列からのスタートとなるが松下信治選手の追い上げと大湯都史樹選手の冷静なレース運びで7位でフィニッシュ

二輪、四輪ともに日本レース界のレジェンド・高橋国光氏(右)と。高橋氏率いるTEAM KUNIMITSUはこの日(2020年の最終戦)最終ラップのゴールライン目前で劇的な逆転チャンピオンを獲得した

 

たかぎしんいち◎1970年山口県柳井市生まれ。92年よりレース活動を開始、フォーミュラ、ツーリングカーで幅広く活躍、数多くの優勝を飾り、2002年、2019年GT300クラスチャンピオン、2020年スーパー耐久チャンピオン獲得。現在SUPER GT歴代最多勝を競っている(21勝)。沖釣りを中心にエサ、ルアー問わず淡水まで幅広く楽しみ、時折海外へ釣り旅行するほどの釣り好き。奥さんは釣りタレント、レースクイーンとして活躍した吉川ひとみさん