◎尾川 泰将

 本誌ライターの赤地忍氏が他界して、ちょうど昨日で一周忌。早いものです……。アカっちゃん、天国でも、熱くボート釣りやってるかーい!

 Wednesday尾川です。

 当時私は「不慮の事故」と記しましたけど、一年喪に服したところでその経緯を詳しく書きたいと思います。

 彼はボート釣りに行き、海で亡くなりました。
 朝7時30分ごろ、東伊豆のレンタル手こぎボートに乗って沖へ出て、10時30分ごろ岸に打ち上げられた遺体を発見。ボートは少し離れた場所で、転覆した状態で見つかったようです。
 警察による推定死亡時刻は9時。約1時間半をかけて岸に漂着した計算です。
 海上で何が起きたのかは不明です。でも、ボート店ご主人の話では「船艇後部の船縁に、それまでなかった凹みがあった」とのこと。それは他船にぶつけられた損傷ではなくて、船縁の上面に「上から重いものを落としたような感じの凹み」だったそうです。
 私の推論を二つあげてみます。
1=アンカーを引き上げるときバランスを崩し後方へ倒れ、頭部を船縁にぶつけて転覆、落水。
2=彼には糖尿病の持病がありました。なのでインスリンが低下し意識朦朧となり、船縁に頭をぶつけて転覆、落水した可能性もあり。というのもここ数年、日常生活でも3回くらいフラフラになったり、意識を失って倒れていたからです。

 ひょっとするとこの2つが重なった可能性もあります。ただしいずれも私の憶測、鵜呑みにはしないでください。

 仮定として話を続けていきますが、気絶したまま落水したとすれば死にいたる確率も高まるでしょう。しかし彼は、きちんとベスト型の自動膨張式ライフジャケットを着ていました。
 ウエスト型が浮き輪のように膨らむ構造であるのに対して、ベスト型のライジャケは前面から首周りをくるむように膨らみ、頭と胴体前面を海面上に露出させる構造。そうして呼吸を確保する仕組みですから、たとえ意識を失っても「呼吸はしていた」可能性もある……と思います。

 ところが後日、ご親族から致命的な事実を知りました。それは私自身の「認識の甘さ」も加担してしまった、ショッキングな事実です。
 葬儀から1カ月後、赤地氏の実家に立ち寄ってお骨に手を合わせ、冥福を祈りました。その際、彼のお父さんにライフジャケットについて聞いてみたところ、
「警察によれば、膨張式ライフジャケットは数カ所破れていて、救命具の役割は果たしていなかったそうだよ」

 結果、最終死因は溺死。二の句が継げませんでした。不具合のないライフジャケットであれば生きていたかもしれないからです。

「10年くらい使ってるので検査してもらったほうがいいんでしょうけどね。まぁ見た目はきれいだし大丈夫でしょ!」

 数年前からそんなやりとりをかわしていた日々が、強烈に、痛々しく、よみがえります。

「君もそろそろ新しいのに替えたほうがいいよ~」とアドバイスしつつも、私だってつい3年前までは色あせたボロボロのライジャケを10年使い続け「ま、平気でしょ!(=オレたちだけは)」なんてほざいていた甘い人間。説得力なんてありません。
 あの日、あの時「メンテナンスに出すか新しいのにして!」と強く進言していればと悔やんでも、後の祭。
 「万が一」にという言葉の深い意味と重みを痛感し、一生胸に突き刺さり続ける取り返しのつかない失敗です。

 そして先日、赤地さんを思いだしながらライジャケをチェック。3年しか使ってないからきっと大丈夫……と高をくくっていたら、とんでもない!
  詳しくは来週水曜日「ライジャケのやばい話(2)」としてお届けします。
 ともあれ年初にあたり、ご自身のライジャケを絶対に点検してください。