◎尾川 泰将
先週に続き、膨張式ライジャケの怖い話。Wednesday尾川です。
赤地忍氏の一周忌を機に、新年早々、自動膨張式ライフジャケットを点検しました。
①マジックテープを開いて中の黄色い布地(これが風船のように膨らむ部分)を露出。空気の吹き込みパイプのキャップを外し、そこから息を吹き込んで膨らませる。
②これで一晩もてば、空気漏れはなし。
なんですけど、え、えええーっ!?
シューーー……………………いきなり空気が抜ける音がして、あっというまに萎んじゃいました。
空気漏れの場所は、首の部分。
直径0.5ミリくらいの穴が開いていて、空気が一気に吹き出していたんです。
「たった3年しか使ってないのに!?」と呆然、生地はきれいですが、これはもう使えません。
上写真がその穴。鋭いものが刺さった痕跡から、間違いなく釣りバリでしょう。
小さなハリでもカエシまで突き刺さったものを引き抜けば、これくらいの穴は開きます。サクッと刺さってスルリと抜けるフグのカットウバリ、ルアー用フック、イカヅノのカンナなども危険ですね。釣りは知らぬまにそんな不運に見舞われる危険性がとても高い趣味。その事実を痛感する、今年一番のショックでした。
空気漏れはなかったとしても、点検すべきはまだあります。
それはボンベ&カートリッジの「セッテングマーク」の確認。
グリーン色ならOKですけど、ボンベやカートリッジの「締め付け」が緩んでいるとレッドマークを示して不具合を知らせます。
↑ボンベ側がレッドマークで「緩みあり!」の警告信号。※下のカートリッジ側はグリーンなのでOK
実際、この緩みはけっこうあって、ずばり盲点。
私も3年の間に二度ばかりボンベのネジを締め直しています。レッドマークのまま事故に遭えば、当然ながらボンベは作動せず、ライジャケも膨らみません。すぐに締めこみましょう。
↑ボンベを回して(上画像)締め込むと、グリーン表示になる(下画像)
今すぐあなたのライジャケを手にしてください。
そして吹き込み口をくわえ思いっきり膨らませて、同時にセッティングマークもチェックしてください。
気をつけるべきは、小一時間待って「空気漏れなし」と早合点しないこと。ゆっくりと数時間かけて抜けることもあるからです。
結果、一晩置いて空気が抜けてなければOK。少しでも抜けていたらそのライジャケは使用不可、処分して買い直しです。
2週にわたったこのテーマは赤地忍氏が警告してくれた、釣り人そして膨張式ライフジャケットを貸している釣り船への痛烈なメッセージ。
メンテが面倒くさい? そう思うなら、空気が抜けない定番の「固形式ライフジャケット」を着用してください。不具合があるかどうか分からない古い膨張式ライフジャケットを着ていても無意味だからです。
新品であっても鋭利なハリなどが刺さればアウトですから「定期的なチェックが、命を守る唯一の術になる」とも言えます。下画像のような傷があるライジャケは、ことさら要注意です。
↑表地が擦り切れて膨張部の黄色い生地が露出。こんなところは空気漏れの危険度MAX
次週水曜日は、本テーマしめくくりの第3弾。
昨年11月、三浦半島で起きた別の事故を取り上げて「落水してしまったときの対処法」を、一緒に考えてみたいと思います。