東京湾の伝統釣法が息づく
鴨居のエビタイ好模様!

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※料金等データは2019年12月のものです。

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東京湾の鴨居沖は伝統的なエビエサのマダイ釣り、通称「エビタイ」の名場所の一つ。オモリ30号の鋳込みテンビンを介し、ハリス4〜5号3メートルの先に2号の豆テンヤを結んだ鴨居式と呼ばれる仕掛けで、海底からタナを取る独特のスタイルはビギナーにも釣りやすく気軽に楽しめる。 この秋は1キロ級主体にトップがツ抜けする日もあるなど好模様が続いており12月も期待大。未経験の方は一度チャレンジしてみてはいかがだろう

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伝統釣法で楽しむマダイ釣り
鴨居式のエビタイ好模様!

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インターネットで「房丸」と検索すると、「鴨居大室港・つり船・房丸東京湾伝統の釣りが楽しめる船宿!」という見出しが検索のトップに出てくる。 東京湾の伝統的タイ釣りといえばエビエサを使う通称エビタイ、竹岡式のシャクリ釣りと鴨居式のシャクリ釣りだ。 オモリ30号の鋳込みテンビンと2号の豆テンヤを使った鴨居式のエビタイは、以前には横浜新山下、元町、金沢八景、走水などから出船する乗合船があった。 だが現在は、本誌船宿データベース掲載で周年に渡って乗合船を出しているのは三浦半島鴨居大室港・房丸のみとなってしまった。そのタイ乗合の舵をとる高橋房男船長は、タイ釣り一筋の名船長だ。 数が釣れる秋ダイのシーズンになっているのだが、天候にも恵まれず、まだまだ釣果にムラがあってイライラしていた。ようやく大潮回りと天候に恵まれた11月13日に港へと車を走らせた。

まずは小ダイがお出迎え
 6時過ぎに港に着いたが、平日なのにタイ乗合にはたくさんの人が訪れていた。僕は右舷ミヨシ2番に席を構える。 ベテランが多いが、若いカップルも乗り込んで(ちなみに2人は初めて房丸を訪ねたようだ)、総勢12名で8時過ぎに出船した。 生きエビは残りが少なくなっていたので1人3匹ずつ配られた。後は冷凍エビで釣ることになる。 乗船者のうち約半数が鴨居式(僕もそうだ)で、残りの半数が一つテンヤだが、1人だけ竹岡式の軽い中オモリを使った仕掛けの人がいた。 昼ごろまでは下げ潮なので、釣り場は第三海堡跡周辺になる。このエリアのタイ釣りは、下げ潮時には第三海堡跡周辺、上げ潮時には鴨居沖の大根や観音崎沖を狙うのが一般的なパターンだ。 8時45分ごろには第三海堡跡の水深37メートルでスタートの合図が出た。

 しばらくカメラを手にして様子を見ると、海はナギで潮もいい具合に流れている。期待できそうだ。 9時ごろに右胴の間で小型ながら本命が顔を見せた。一つテンヤ仕掛けだ。左舷では良型のショウサイフグが上がった。 9時半には右大ドモでまずまずの型が出た。これも一つテンヤ仕掛け。 続けて左舷でも小型の秋ダイサイズが出たが、これは鴨居式仕掛けにきた。 このころから10時過ぎまでが時合なのか、あちこちでキュキュンと竿が絞られた。画撮りに忙しかったが、時合に竿ではなくてカメラを手にしているのも、釣り人としてはつらい(まあ、仕方ないけどね)。 左胴の間の常連氏は、鴨居式の仕掛けでマダイに続いてカンパチをゲット。カンパチはその後にも出たが、おいしいお土産だ。

 左胴の間で竿を出す鈴木さんにも1枚目がきた。鈴木さんは長年房丸に通い続ける常連でタイ釣りの名人と噂される。3日前の日曜日には、なんと16枚を釣って竿頭になっている。これまでに24枚を釣った日もあるようだ。 仕掛けは一つテンヤ用の市販の遊動テンヤだが、竿は独特の調子の和竿だ。一目見て、横浜竿の「汐よし作」と分かる。汐よしさんに、あれこれと細かい注文をして完成した両軸リール用の一つテンヤ竿というわけだ。 穂先のわずかな部分はシロギス竿のように細く削り落としてあるが、穂持との継ぎ目はうんと太い極先調子竿だ。 釣り方も独特で、キュッと鋭くシャクってユラーッと落とす誘いを繰り返している。 房丸の常連で一つテンヤ仕掛けを使って釣る人は、ほとんどこの釣り方だ。

 元もと、鴨居には今の30号の鋳込みテンビンを使った鴨居式タイ釣りの前に、重いテンヤと軽い中オモリの仕掛けを手釣り糸でたぐり上げて誘って釣る「タテ釣り」という漁師釣法がある。 亡くなった走水港の勝洋丸の船長はタテ釣りでタイを釣ったりもしていた。 また、「一つオモリのタイ釣り」といって、中オモリは使わず、重めのテンヤだけを付けて手バネでシャクリ続ける釣法もあった。 鈴木さんの釣りは一つテンヤではあるが、元もとあった鴨居の伝統釣法の香りもする。

1.8キロの中ダイも
 右舷トモ寄りに座ったカップルの男性にも、マダイがヒット。一つテンヤタックルに竹岡式の中オモリと豆テンヤをセットした釣り方だ。 さてさて、僕もなんとか型を見たい……と竿を出して誘い続けた10時半ごろに、竿先がキュンと入った。 瞬間的に合わせると、キュキューンと竿が絞られる。間違いなく本命だ。500グラムちょいではあるが、とりあえずはホッ。 11時過ぎには上げ潮狙いで観音崎沖へと移動した。数多くの僚船も近くを流している。一つテンヤ、タイラバの普及で東京湾のエビタイの船はずいぶんと増えた。

 上げ潮が効くと、左ミヨシに入っていた常連の津留崎さんもいい調子で釣り始めた。 左胴の間の鈴木さんの友人で、2人の釣り方はまったく同じだ。14時過ぎには後検量1.8キロのきれいなマダイを取り込んだ。当然のこと、写真撮影ということになったが、魚を持つポーズも完成度が高い。当然といえば当然で、津留崎さんはプロの釣り写真家なのだ。 上げ潮がほどよく流れる中で、何度も流し変えたが、左舷が順調でバタバタと数がのびる。船のイケスも赤くなってきた。 そんな中で、右舷のカップルの女性が真剣な顔でリールを巻き始めた。引きが強く、なんとか浮かせたのは1キロ級のマダイ、やったネ! ちなみに彼女の仕掛けは彼氏と違って鴨居式だった。

 結局15時半過ぎまで流して、船中釣果は0.4〜1.8キロが0〜7枚。鈴木さんが7枚、津留崎さんが6枚と両名がダントツだった。 秋ダイの釣れ具合がやっと安定してきたが、やや遅れ気味なので12月に入ってもまだまだ数釣りが楽しめそうだ。 シンプルな伝統釣法で、しびれるようなマダイの引きを味わってはいかがだろう。


三浦半島鴨居大室港 房丸

☎046・841・9206(詳細は巻末の情報欄参照)

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▶料金=マダイ乗合一人8500円(エサ、氷付き)
▶備考=8時出船、駐車場あり。ほかアジ、12月2日よりスミイカへも出船予定

 

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