深場のルビー〝アカムツ〟好況
犬吠埼沖でトレジャーハンティング

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※料金等データは2020年3月のものです。

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鮮やかな赤いボディに極上の脂を蓄えたアカムツは、深場のルビーとも称される食味抜群の高級魚。 アカムツの釣り場は各地にあり狙えば周年釣れる魚だが、この時期に関東エリアで最も盛り上がっているのが犬吠埼沖だ。

 2月下旬に釣行した茨城県波崎港のひろの丸では、水深220〜250メートル前後を探って30〜48センチが0〜3尾。当日は3ノット近い速潮に阻まれ数こそのびなかったものの、釣れ上がったお宝は評判どおりの良型ぞろい。潮具合など条件がそろえばバッグリミットの10尾に到達する日も珍しくないというから期待度◎だ。

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深場の人気魚アカムツ
犬吠埼沖は良型ぞろい

皆さん、目を閉じたらでっかい梅干しを思い浮かべてください。ほらっ、口の奥のほうから徐々に唾液が出てきませんか? 実は私には梅干し以外にも思い浮かべると唾液が出てくるものがある。 それはアカムツ。その貴重さと美しい紅色の姿形から深場のルビーとも称されるアカムツは食味も抜群。脂が乗った白身は刺身はもちろん、煮ても焼いても他の追随を許さない超美味な魚。 とくに皮目をバーナーで炙った「炙り刺し」を口にすると「あ〜、生きててよかった」とため息が出てしまう。

 あっ、この記事を書いているだけで、ついつい唾液が……。 そんなアカムツを狙って、ほぼ周年乗合船を出しているのが茨城県波崎港の「ひろの丸」。同船では2月に入ってアカムツの釣果が絶好調で、連日規定数量の10尾を釣る人が続出しており、しかも大きいもので50センチ級も上がっていると聞いたからには行かないという選択肢はない。 そこで2月24日、深場のルビーを採掘すべく釣友の山崎さんと出かけた。

速潮でも出足快調
 当日の乗船者は私たちを含めて10名で、準備が整った4時20分にもやいが解かれた。 ポイントの犬吠埼沖までは航程2時間ほどかかるのだが、アカムツを手にするためと思えば苦にはならない。 乗り合わせた皆さんはアカムツに魅せられた方ばかり。すでに今年になって何度も通っている常連さんもいたので状況を伺ってみると、「犬吠埼沖の魚影は濃いから腕前はあまり関係ありませんよ。釣れるか釣れないかは、潮が速いかどうかで決まっちゃいますね」と教えてくれた。

 ポイントに到着するとすっかり明るくなっており、朝日に照らされて潮回りをする十数隻のアカムツ船の姿が眼前に飛び込んできた。「同時に仕掛けを入れないとオマツリしますから、準備をしておいてください」と投入前に廣野正船長からアナウンスがあり、皆さんオモリを手に持ってスタンバイ。「はい、どうぞ。水深は240メートルです」との合図で一斉に投入された。 船長に潮の速さを聞くと2ノットもあるとのことで、この速潮がどう影響するか気になる。 ひと流し目からアカムツが上がる。カメラを構えると、釣り上げた右ミヨシの髙橋さんが40センチ級を掲げ、「とりあえずオデコは逃れましたよ」と最高の笑顔を見せてくれた。 次の流しでは左トモ側2番の飯原さんが同級を釣り上げ、「まだまだ釣りますよ」と頼もしい言葉。

 そして、3流し目には右トモの村山さんが32センチをキャッチ。その直後、「でかいぞぉー」とタモを手にした廣野船長の言葉に取り込み風景を撮ろうとカメラを構えていると、ユラユラと浮き上がってきた大きなアカムツをスパッとすくい上げた。 釣り上げたのは右胴の間の瀬賀さん。計ってみると48センチ、1.5キロであった。「アカムツは固まっているから、だれかが釣ったら気合を入れて誘って」と船長が檄を飛ばすと左ミヨシの髙橋さんにヒット。 髙橋さんの2尾目となるアカムツは42センチとまずまずのサイズだ。 次の流しも順調にアカムツが上がり写真を撮っていると、釣友の山崎さんが悲鳴を上げた。驚いて振り返ると、海面にアカムツがプカプカと浮いており、隣の人が急いでタモを取りに行ってくれたが間に合わず。ルビーはユラユラと深場へ帰っていった。

 話を聞くと、オマツリをしたので仕掛けを回収したのだが、まさかアカムツが付いているとは思わなかったので高速で巻き上げたためにハリ穴が広がり、海面で仕掛けのテンションが緩んだときに外れてしまったようだ。 痛恨のバラシに落胆する彼だが、すぐに次なるアタリをキャッチ。今度は慎重に巻き上げたのだが、取り込んだのはムツはムツでもクロムツ。 反対側でも瀬賀さんがダブルでクロムツを釣り上げたので群れの上を船が通過したのだろう。

後半は二枚潮に苦戦
 出足は順調だったが、さらに潮が速くなったうえ二枚潮になり、オマツリが頻発するようになる。 アカムツ釣りは底付近に仕掛けをキープしつつ定期的に誘いを繰り返すことが肝心。しかし、着底後、誘い上げると仕掛けが吹き上がってしまい、再着底させようとすると道糸がどんどん出てしまう厳しい展開に。その後は着底直後にしかヒットしない流しが続いた。

 そこから私も釣りに参加したのだが、ホタルイカの胴を外してキモが付いた頭部をハリに付けようとすると常連さんから、「こんなに速い潮だったら底に着く前にキモが流されてしまいますよ」と助言を受けた。 したがってホタルイカは1杯掛けにし、サバの切り身と抱き合わせにして投入。 すると仕掛け落下中にサバが掛かってすぐに回収。しかし、次の流しでは着底後に糸フケを取っているとカツカツとしたアタリが到来。合わせを入れるとグググッと手応えがある。

 巻き上げ中に断続的に抵抗する感触は間違いなくアカムツのそれだ。しかし喜んだのも束の間。50メートルも巻き上げたころだろうか、急にギュンギュンと重くなって巻き上げられなくなったかと思ったらプッツン……。 回収するとサメに横取りされてしまったらしく幹糸がスッパリと切られていた。 そして、最後の流しは残念ながらオマツリをしたところで時間切れとなった。 釣果は船中10尾、トップは3尾を釣った髙橋さん。速潮の影響で数はのびなかったものの、サイズは30〜48センチと良型ぞろい。 潮が緩めば高確率でアカムツの好釣果が期待できるので、深場のルビーを求めて出かけてみてはいかがだろう。


茨城県波崎港 ひろの丸

☎0479・44・1582

▶料金=アカムツ乗合一人1万3000円(ホタルイカ1パック、氷付き)▶備考=4時集合、無料駐車場あり。ほかヤリイカへも出船

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