スルメ釣りたきゃ一度はおいで
石廊崎沖のスルメ   今年も絶好調!

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※料金等データは2020年7月のものです。

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 全国的に見れば今や貴重なスルメイカだが、南伊豆の石廊崎沖だけは別。各地のイカ釣り師たちも夏だけは石廊崎沖に通う人が多いほどで、関東周辺ナンバーワンのスルメどころなのだ。 手石港の米丸では毎年夏にスルメを狙っており、今年も出船すれば、その人の腕なりにタップリ釣れている。

 水深200〜250メートルと深いため、1回の投入でいかに多く乗せるかが数をのばす条件だが、乗せること自体は決して難しくない。スルメの反応は濃く、幅50メートル、ときに70メートルにもなり、直結仕掛けが止められることもしばしば。そう、いかに取り込むかがカギなのだ。 思わず「これぞスルメイカ釣り!」と吠えたくなるような、迫力ある体育会系の釣り。

100杯超えを目指すもよし、バラして悶絶するもよし。楽しんだ者勝ちの石廊崎沖のスルメイカは、今が一番おもしろい!

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イカ名人の技に学ぶ多点テク
スルメ釣りの楽園・石廊崎沖

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「150で止まったよ」 最新電動リールが唸りを上げて毎秒1メートルほどのピッチで力強く道糸を巻き上げていく。 船底へ道糸が当たるのを竿先を下げて防いでいるから、竿の曲がりを見ることはできないが、PEラインが引き絞られるように緊張している様子から、その重さが窺える。 道糸を巻き上げきると、富田昌幸さんは下げていた竿を左手でグワッと持ち上げながら、右手でオレンジ色の先糸をつかむ。

 そして先糸をつかんだ右手を持ち上げながら左手を下ろして竿を船ベリに立てかけると、仕掛けが船ベリに当たらぬよう前屈の姿勢で両手を一杯に伸ばして取り込んでいく。 ブシュッ! プシュッ! ブシュー! 4、5、6、7、8杯! 背中合わせの大槻朋広さんも同様の多点掛け。時刻は10時。米丸のミヨシには船上干しの暖簾が2列、完成しつつあった。

ツノのサイズで   こうも変わる

 元来、スルメイカ釣りは多点掛けが魅力の体育会系釣り物だが、昨今は思うように釣れない場所が多い。そこにきて夏の石廊崎沖のスルメだけは毎年好調、だれもが1投多釣の、夏のスルメらしい釣りが楽しめる。 ただし、釣り場は200〜250メートルと深いうえ、潮が速かったり複雑なことも多いので、1流し1投勝負になることがほとんど。 となれば、いかにバラさずに取り込めるか、が釣果に大きく影響する。ここが、スルメの直結仕掛けのだいご味だ。 この日は前出のイカ名人・富田昌幸さんと大槻朋広さんが左右のミヨシに、左舷胴の間とトモにお客さん、右にレーシングドライバー・高木真一さん、ひとみさん夫妻が入った。

 5時に港に集合し、準備でき次第出船、6時に石廊崎沖に到着し、反応を探す。「はい210メートル、底のほうだよ」 肥田定佳船長のアナウンスでスタート。風は東寄りで強く、海も悪い。道糸は左舷から右舷へと勢いよく流されていく。「ちょっと上げて。オモリを200号に替えましょう」 即座にオモリ変更を告げて改めて反応に乗せて投入。 相変わらず道糸は左から右へ流されてはいるものの沈降スピードは格段に上がったようで、狙いどおりスルメの群れを直撃、着底とほぼ同時に船上に巻き上げモーター音が響き渡る。 まずミヨシで富田さん、大槻さんが仲よく5杯掛け、左舷のお客さんも2杯、1杯、右舷ではひとみさんもスルメをブッコ抜き。が、高木さんだけ沈黙。 再び反応を探して投入、アナウンスはほぼ同じで、ミヨシのイカ名人ペアは6杯、5杯で、ひとみさんは2杯。 問題は高木さん。3投して1人だけゼロということは、なにか理由があるハズ。と、聞いてみたら、皆さんと違う点はプラヅノ14センチの仕掛けということ。

 18センチヅノ仕掛けに交換しようにも、14センチしか持っていない。これには理由があって、事前に私がプラヅノは14センチでもいいんじゃない? なんて話をしたのだ。 プラヅノの大きさでこうも変わる? と思う方がいるかもしれないけれど、少なくともこの日、石廊崎沖では決定的だった。 なぜなら、船長に18センチヅノ仕掛けを借りて以降、高木さんも周りと同じペースでスルメイカが乗るようになったのだ。「ご覧のとおり、プラヅノの色について私はあまり、こだわっていないんですよ」 これは、流しのたびにスルメを抜き上げる富田さんのプラヅノの色についてのコメントで、富田さんは青、ピンク、ケイムラ、緑を配置しており、また、プラヅノは見た目で傷が付いたり、光沢がなくなっていなければ再使用するとのことだった。

名人1人多点掛けのなぜ?

「イカが多いときは70メートル幅ぐらいの反応になるよ」と、船長。当日は底周辺の反応が主で、いつもより少なめとのこと。イカ名人2人も「いいときには船上干しを作る暇がないほどすぐ次の投入になる」と言う。 そのうえ潮が悪い。いわゆる二枚潮だと思われるが、200メートル先のイカの反応(それも足が早い)に当てるのは難しい。それでも空振りの流しは数えるほどだから、やっぱりイカは濃い。ガマンして1、2杯、時折4、5杯と数を重ねていくうち、いよいよ宙層で仕掛けを止めるような反応に出くわした。

 それが冒頭のシーン。魚とおぼしきブルブル、ガサガサと伝わる反応のすぐ下で、スルメに止められたと富田さん。 その後も数回、宙層で触りを感じて、多点掛け。 ちなみに宙層で触りを感じたら、富田さんは基本的にその時点で仕掛けを止める。 欲をかいて反応の下まで仕掛けを下ろしてすべてのツノに乗せようとすると反応が抜けてしまうこともあるそうだ。 おおむね、落下中に触ってきたり、止めてしまうような反応は、止めて、ゆっくり巻き上げれば多点掛けになることが多いそう。 と、反応がいいときに多点掛けになるのは理解できる。加えて、動作が完ぺきなら取り込む数も急伸する。 不思議なのが、触りなく着底し、周りはだれも乗せていないのに、富田さんだけ多点掛けになっているシーンが数回見られたこと。 これは「周りにイカがいても乗らないときに1杯目を掛けると、その仕掛けが多点掛けになる」現象とか。

 富田さんは仕掛けが着底したら、巻き上げることなく、底スレスレでマルイカの宙釣りのようにアタリ(変化)に合わせて掛けていく。 動作は止め→合わせ(または空合わせ)→ストンと竿を下ろす。の繰り返しで、アタリがなければ20メートルほど巻いて落とし直していた。 こうして最初の1杯を掛けると、それがスイッチとなって周りのイカが乗ってきて一人だけ多点掛けになるそうだ。う〜む、スゴ腕である。 時折雨が降る中、12時半過ぎに終了した当日のトップは富田さんの53杯。 船長も富田さんも「普段の石廊崎沖に比べたら反応が少なく渋かった」とのことだが、潮回りは短く、ほぼ毎投イカが乗る濃密な半日だった。 アレコレ試したり取り込みが上達するのはやはりイカが釣れてこそ。イカファンの皆さん、南伊豆石廊崎沖のスルメは8月もイチオシですぞ!


南伊豆手石港 米丸

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▼料金=料金=スルメイカ乗合 一人1万3000円(氷付き)▼備考=予約乗合、5時集合

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