text by Go Takahashi

※料金等データは2019年8月のものです。

P76 7907

#釣り開始までの幸福感
#期待しかない
#カッコよくスッパリと
#オオモンハタを釣ってくれ      

 早朝の真鶴港に、イソメマン鹿島がクルマを停めた。港はミルク色の濃い霧に包まれ、空気中の水分が音を吸い込む。 先ほどまで、車内では文字化するまでもないバカ話が繰り広げられていた。30代、40代、50代。ヨッシーと取材陣、そしてイソメマン鹿島が、年齢も立場も関係なく全員小学生男子化してゲラゲラと笑っていた。

 その騒ぎとは対照的に、港はひどく静かだ。水鳥の鋭い鳴き声がときおり静寂を切り裂く。 戦いのときだ……。 入念に準備を整えたヨッシーが、シュタッとさい丸に乗り込む。船体がふわりと揺れる。悔しいがカッコいい……。「昨日は45センチ、1キロのオオモンハタが釣れたよ」 御守紀幸船長の朗らかな声に、ヨッシーの目が光る。7月18日、午前5時40分。さい丸は静かに港を離れ、霧を裂きながら淡々と進む。空気はじっとりと湿っている。この戦い、何かが起こりそうな予感があった。 ……予感は。

 釣り始める前は、いつもワクワクするよね! ヨッシーが笑みを浮かべた。釣り人は、船が港を出て1投目までの間がもっとも幸福なのだ。

P76 79A

#いるのなら   
食わせてみせよう     
#豊臣秀吉的工夫    
#細かいセッティング   
#気を抜かない根性

 ワームで狙う根魚──ロックフィッシュは、ブラックバスフィッシングによく似ている、とヨッシーは言う。 めちゃくちゃ手軽に楽しめるんだよね。タックルはバスタックルでも十分イケるし、仕掛けもテキサスリグで簡単だ。 しかもロックフィッシュは素直なんだよ。魚がいる場所にうまくワームが落ちれば、たいていバックリ食ってくる。かわいいヤツらだ。そこそこ数も釣れる。そして、食べてもおいしい。

 実はビギナーの方にもかなりオススメできる釣り物だ。根掛かりはしやすいけど(笑)。 ヨッシーが手にするワーム、ジャッカルのバリブルシャッドも、ブラックバス用のワームによく似ている。だが、バス用とは異なるチューニングが施されているそうだ。 よく見てほしいのは、このリブ(ギザギザ)。これ、何のためだと思う? ひとつには、水押しをよくする効果。いわゆる潮噛みってやつだね。波動を起こして魚へのアピールを高める狙いだ。 だけど、もっと大事な理由があるんだよ。さて、なーんだ? ……クイズはいいから。早く答えを教えてよ……。

 じゃ、ま、考えてみて。 5時55分、水深24メートルのポイントに到着すると、ロックフィッシングが始まった。 オモリが着底すると、スッ、スッと竿をあおりワームを踊らせ、フワーッと着底させている。 ワームを底から1~2メートル浮かせて、大きな動きでロックフィッシュを飛びつかせようとしてるんだけど、返事がないね……。お留守なのかな? いれば食う。いなけりゃ食わない。ヨッシーは積極的に入れ替え、キャストを繰り返してロックフィッシュが潜む根を探す。

 回収の際にもヨッシーはときおりリーリングをピッと止める。 あ、分かった? 今回の本命であるオオモンハタは、宙層でガツンと食ってくることもあるんだ。突然デカいのがくるから、いかなるときも気を抜けない。それがロックフィッシュさ……。 まずい。ヨッシーがだんだんカッコいい系の扱いになってきた。しかし、実際にヨッシーはハリが水中にある限り、集中を途切れさせない。 回収途中でリーリングを止めるのは、回収動作でワームを追う魚がいるかもしれないから。食いつく間を与えているのだ。 もう少し動きをゆっくりにしてみるか……。 オモリを1オンス(28グラム)にし、4インチのワームに替えた。動作は先ほどと同じだが、よりゆっくりスイミングさせると、すぐに返事があった。

 キタよ! アカハタだ!! 作戦成功だよ。ワームが浮いている状態で食ってきたから、底にいたのが追いかけて食ってきたんだね。いや~、よかったぁ! 小学生男子的笑顔でアカハタを掲げる。やはり魚がいるポイントに入れば確実に食ってくる。 ここからは、ひっきりなしにアタリ始めた。……フグが。 ワームがかじられまくるが、アカハタも順調に上がる。クーラーが華やかになってきた。

P76 79D

#何となく釣るな!
#すべての動作に意味がある
#細かく変えてる    
#アタマ使ってます

 ヨタ話をしながらパンをパクついていても、ヨッシーは一切気を抜かない。「ながら合わせ」を次つぎにキメて、着々とアカハタやカサゴを上げる。 釣り方はあまり変えていないように見えるが……? ブブーッ! ブブブブーッ! 気付かないかなあ。釣り方、結構変えてるよ。 オレが注意してるのは、どこでどう食ってくるか、だ。ワームを浮かせたときに食ってくるのが多ければ、スイミングさせることを心がける。

 ボトムで食ってくることが多ければ、ワームをチャンクローのようなシュリンプ系に替えて底をたたく。「いれば釣れる」というシンプルさがロックフィッシングの魅力だけど、細かいチューニングが釣果に響いてくるってとこが、飽きさせないんだよね。 チャラ系人物に見えなくもないヨッシーだが、そのルックスに反し、釣りに関しては相当にストイックだ。「何となく釣る」ってことは、オレにはないね。状況を判断しながら、常に組み立てを考えてる。そしてその考えに基づいて釣りをして、魚からの返事によって、対応を考えるんだ。

 アタマ、使ってるんだよ!「考えている」で思い出した、さっきのクイズ、ワームにリブが入ってる理由、教えてよ! あのね、ソルトのロックフィッシュはワームを吸い込むようにして食うんだ。そして、ゴツイ見た目の割にヤツらはデリケート。ちょっとでも違和感があるとすぐに吐き出しちゃう。 なるべく違和感なく吸い込ませ、食い込ませるために、ワームは軟らかく、折れ曲がりやすいほうがいい。リブは、ワームをソフトにする効果もあるんだ。らかく、折れ曲がりやすいほうがいい。リブは、ワームをソフトにする効果もあるんだ。

 それにしても、パタパタとよく釣る。イソメマン鹿島さんもほとんど同じような釣り方に見えるが、やけに釣果に差がある。 なんだ? ヨッシーは何を隠してるんだ? 仕方ない、教えてあげよう。 オモリを先に着底させて、それにワームを追従させるといいよ。つまり、ワームがフワフワと漂いながらオモリを追いかける、というイメージかな。 やっぱり魚は自然な動きに食いついてくるんだよ。それに、ワームをくわえたときにオモリの重さを感じると、ヤツらはデリケートだからすぐ吐き出す。

 できるだけ自然な動きを演出して、なおかつオモリの重さを感じさせないようにするのがコツなんだよ。 そのために重要なのは、ラインテンションのコントロール。フリーフォールなんだけど、完全にラインテンションを抜いてるわけじゃない。わずかにテンションをかけてる。そうするとワームがよく泳ぐんだ。

#ヒミツの     
カーブフォール   
#ここで書いたらヒミツじゃない
#でも大丈夫        
#そう簡単にはできません

 ヨッシーが過去に東北でロックフィッシングをしたとき、地元のベテランに10対0というレベルの大敗を喫したそうだ。 何かが違う。でも何も教えてくれない。ベテランの釣り方をじっくりと観察したところ、フリーでもなく、張りすぎでもないラインテンションに気付いた。 ヒミツのカーブフォールがあったんだよ!……あ、ここで書いたらヒミツじゃない(笑)。

 公然のヒミツのカーブフォールを教わったイソメマン鹿島は、いきなりエンジンがかかった。バッタバッタとアカハタを釣り上げる。「すげえ、ホントに釣れる!」と満面の笑顔だ。 まぁ、東北のローカル釣法がたまたまここ真鶴沖でも当てはまっただけかもしれないけどね。 でも、地域によって変わる釣り方を探り当てるのも、ロックフィッシングのだいご味だよ。 ラインテンションのかけ方にしても、ホントに微妙な差。パッと見は同じことをやってるみたいで、地味な釣りに感じるかもしれない。でも、その見えるか見えないかの微妙な差が釣果を分ける。結構シビアで、奥が深いんだ。

 この日、午前と午後の通しでさい丸に乗船したが、ついに本命のオオモンハタは顔を見せてくれなかった。オオモンハタとヨッシーの間に、微妙な食い違いがあったのだろう。 それはいったい何なのか。答えを見つけるために、ヨッシーは今日もどこかで船に乗り、考え続けているのだ……。 うーん、ここんとこずっとカッコいいじゃないの……。

P76 7916 B

#テンション#テンション    高まった!

◉午後3時45分、リーリング中の宙層でいきなりドスンというアタリ! 最初の突っ込みが強烈で、「ついに本命のオオモンハタか!?」と胸が高鳴った。◉午後3時45分、リーリング中の宙層でいきなりドスンというアタリ! 最初の突っ込みが強烈で、「ついに本命のオオモンハタか!?」と胸が高鳴った。

 膝を曲げて突っ込みをいなし、ようやく上がったのは丸まるとしたワラサ。ぜいたくなゲストだった。 いつ何がくるか、本当に気が抜けないスリリングさがロックフィッシングの面白さ。釣り仲間とダベりながらでも、おやつを食べながらでも、竿先からは決して目を離すな!


P76 7919

tackle❶ロッド=ジャッカル・GSW-C72MHリール=シマノ・ベイゲーム150DHライン=PE1.2号 リーダー=フロロカーボン4号

tackle❷ロッド=ジャッカル・青帝PRIZA・STPC-210H-TTリール=シマノ・カルカッタ300HGライン=PE1.2号 リーダー=フロロカーボン5号3mシンカー=バレットシンカー1オンス(28g)シンカー=バレットシンカー1オンス(28g)フック=オフセットタイプ#1/0

◉ワーム=は左からジャッカル・イカクロー、グラビー、バリブルシャッド各3~4インチ。グラビーとバリブルシャッドをメインに使用


P76 7918 

相模湾真鶴港さい丸

☎0465・68・2761

◉料金=ロックフィッシュ乗合1人8500円(氷付き) 
◉備考=予約乗合。1人より受付、午前(5時半~11時)、午後(12時半~17時半)。ほかコマセ五目、浅場の根魚(エサ)、乗合へ

船宿データベースはこちら。