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※料金等データは2020年3月のものです。

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#沈黙の海    
#タイラバは頭脳戦   
#シケの東京湾     
#祈るように巻く

 

「持ってる」って言葉が、好きじゃないんだよね。 2月26日朝6時、京急大津・いなの丸に山盛りタックルとともに登場したヨッシーは、いきなりそう言ってギラリと目を光らせた。熱い……。 おれも「持ってる」って言われることがある。だれも釣れてないときにヒットさせたりすると、「さすがヨッシー、持ってるねぇ~」って。 うれしいよ? でも運って意味での「持ってる」なら、違うと思う。運じゃないから。考えてるから。これでも(笑)。 朝から戦闘モードのヨッシーである。それもそのはず、春の東京湾タイラバはかなりストイックな戦いなのだ。乗っ込みシーズンで大型が期待できる一方、ムラっ気が強く大ハズレの可能性も否定できない……。

 当日は10メートルの北風が吹きすさび、気温は7~8度で小雨降るスパルタンなコンディションだった。これから始まる午前・午後ぶっ通しのストイックな巻き巻き地獄を前に、ヨッシーの目玉が三角になっても致し方ない。 ちなみに、いなの丸の一つテンヤ&タイラバ船は基本的に中潮と大潮の午後に出船する。希望があれば午前も、というわけで、「そりゃもう希望するでしょう!」と目玉三角な我われテン高取材陣および血気盛んなヤングアングラー2名、計6名を乗せ、いなの丸は午前7時過ぎに港を離れた。 寒い。冷たい。揺れる。そんな過酷な状況下にあっても、考えるアングラー・ヨッシーの脳内はタイラバに挑むにあたっての戦略が渦巻いていた。 天気が悪くてローライトだから、まずは明るめのアピールカラーで活性のあるマダイを拾っていこう。ビンビン玉TGの80グラム+蛍光オレンジのフィネスカーリーで始めてみるよ。

 30分ほどでポイントに到着した。水深は40メートル前後。釣り始めていきなりヤングアングラーにホウボウがヒットし、さらに9時40分にはヨッシーにもダダダッというアタリがあった。 くるか!? と期待は高まったが、それきり、東京湾は長い沈黙に入った。 うーん、魚のやる気はありそうだけど……、群れは小さいのかもしれないね。いいとき、いい場所にいればチャンスはありそうだよ。 6時40分の満潮から、潮は下げ続けている。午前船は結局、ヨッシーの1ヒット、フックアウトのみに終わった。

 

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#爆・発・開・始   
#連発するアタリ    
#海面を割るマダイ   
#上げ潮の起爆力     
#ヨッシー三振

 12時35分。我われが、いなの丸に居残り、寂しく身を寄せ合いながら冷えた昼食をとっている間に、海は干潮を迎えていた。さあ、上げ潮だ。風は相変わらず強く海はガチャガチャしているが、温かく力強い潮でプランクトンが舞い、魚たちも動き始めるだろう。 はたして、13時過ぎに午後の釣りが始まるや、いきなりアタリが出まくった。午前の海とはまったく違う様子になっていたのである。 間違いなく活性は上がったね。正直言えば、潮が下げ止まってから上がり始めるその瞬間に釣っていたかった。潮の変わり目にデカイのが食ってくることが多いから。でも、お昼休みだったからね(笑)。 上げ潮がマダイのやる気スイッチを入れたのは間違いない。群れに入ればほぼ確実にアタリが出るし、しつこく飛びついてきたよ。 13時半、ヨッシーが待望の1枚目のマダイを釣った。午後船では「開始直後」だが、午前船から4時間半にわたって巻き通してきたのだ。喜びもひとしおである。

 そして13時50分、立て続けに2枚目をキャッチしたヨッシーは、安堵のため息をついた。持ってる……のではなく、アイデアと海況と魚のご機嫌がピッタリ合っての成果だ。 タイラバには独特の緊張感があるね! 巻き上げてても腰が引けるよ(笑)。「しっかりハリ掛かりしてるかな……」という不安のなかでのファイトは、本当にスリリングで面白い。 スカートは午前と同じフィネスカーリーの蛍光オレンジ。午後も天気が悪いままのローライトで潮も濁ってたから、とにかくマダイに気付いてもらうためにアピール力があるカーリーを使いたかった。 でも、食い気もあるみたいだったからね。アピール+繊細さで食わせるフィネスカーリーがちょうどよかったんだ。 アタる、アタる。午前の巻き修行がウソのようにアタリが連発する。が、掛からない(笑)。合わせて大きくロッドを曲げるまで重みが乗っても、バレてしまう。「アタリが出て、ロッドが曲がり、合わせて、バレる」を3回繰り返したヨッシー。見事なまでの三振を食らったのである。そもそもタイラバで合わせとはちょっと意外だが……。 うん、即合わせは厳禁だよ。ゴゴゴンッという最初のアタリは、まだタイラバのどこを食ってるか分からない状態。フッキングはまずしないし、バレたときに魚が散りやすい印象もある。

 でもアタリが続いて、続いて、「乗った!」と確信が持てたときには、安心感を得るために1発合わせをお見舞いしてからファイトしたいんだ。ドラグも緩めに設定してるから、念押しの1発だね。 ただ、今日のマダイはタイラバにアタックはしてくるけど、口にまでは入っていない状態だったみたい。食い気はあっても完全にはやる気スイッチが入っていなかった。だから合わせは入れず、送り掛け(アタリがあってもただ巻き続けるだけ)のほうがよかったかもしれない。 1枚目、2枚目ともにネットインと同時にフックが外れていた。食いが浅いからこそ合わせが有効な気もするが、シケの海では船の揺れも大きく影響する。ラインテンションが抜けたときにオモリの重さでハリが外れてしまうのだ。  三振から方針を変えたヨッシーはその後、4回のアタリに対し3枚を送り掛けでフックアップさせることに成功。打率を回復させた。

 

#波動を見極めろ 
#定速巻きも極めろ         
#微調整をあなどるな     
#タイラバvsイソラバ

 今回も当コーナーのマスコットキャラクター、イソメマンこと鹿島一郎さんが同船していた。そして中通しオモリ+イソメという、タイラバならぬイソラバ仕掛けでヨッシーに挑んでいたのである。 さらに筆者タカハシゴーは、「せっかくならだれも使っていないネクタイで釣りたい」と、波動が強い変則カーリーにこだわっていた。 左舷ミヨシからフィネスカーリーのヨッシー、変則カーリーのゴー、そしてイソラバのイソメマン鹿島という並びだったが、これがまた見事に真ん中の変則カーリーを飛ばして、ヨッシーとイソメマン鹿島にアタリが出るのだ。 イソメマン鹿島も、ただ闇雲にイソメを付けているだけではなかった。「ヨッシーがフィネスカーリーでアタリを出しているのを見て、できるだけ細いイソメを選んでました。グッヘッヘ」と笑ったのである。「波動」はタイラバの重要キーワードのひとつだけど、想像以上にハッキリと釣果に差が表れることが分かったね。強波動が効くのは、やっぱりマダイがかなりやる気のときなんだよ。 さらに面白かったのは、タイラバでもエサ(イソメ)と十分渡り合えたことだ。

 イソメマンのアタリの出方を見ていると、マダイの目の前を仕掛けが通れば口を使ってくる感じだった。 一方、フィネスカーリーはイソメより広範囲の魚にアピールして魚を寄せることができ、さらに口も使わせられていた。タイラバの強みが発揮できたね。 合わせ、波動のほかにも、タイラバは様ざまな微調整が必要で、そこが楽しい。今回のようにシケの海では、船の揺れを相殺することを意識しながらの定速巻きも効いたはず。 ゴーさんを見てると、素直に一定速でタダ巻きしていたよね。でも、それじゃ船が波で持ち上がったときには巻き上げが速くなるし、逆に下がるときには巻き上げが遅くなってしまう。 リールのギア比にもよるけど、1秒1回転をベースに、船が持ち上がったときにはゆっくり、下がるときには早めに巻けば、定速が維持できるよ。

 上げ潮の爆発力はスゴかった。午後船が終わってみれば、ヨッシー5枚、イソメマン5枚。そして強波動にこだわったうえ微調整の機微に気付くのが遅かったタカハシゴーは1枚……。とはいえ、全員が型を見られて大団円となった。 途中からサイズアップを狙ってフィネスカーリーのレッドゴールドフレークに替えたけど、大ダイは出なかったな……。 でも、東京湾のタイラバは潮を読みながら戦略を立てられるのがやっぱり面白いね。そう、持ってるんじゃなくて、ココだよ、ココ! 人差し指でコメカミをトントンして、ニヤリと笑った。

 

#テンション     
高まった!

東京湾のマダイは姿形も美しく、味もサイコー! 今回は海の悪さにもシビレたけど、本来は穏やかな内海で静かに巻きを楽しむ平和な釣りなんだ。 差をつけようと思うと微調整が必要だけど、基本的には落として一定速で巻くだけ。巻き続ける根性は必要だけど、だれにでもチャンスがある。前日にも中学生が良型を上げてたからね。ビギナーの方もぜひチャレンジしてほしいな!


 三浦半島京急大津 いなの丸

☎046・841・9191

◉料金=午後一つテンヤ&タイラバ乗合一人6000円(エサ、氷付き)
◉備考=ほか午前、午後アジ、午前タチウオ、ショートタチウオ、マダイ(コマセダイ)乗合へも