◎尾川 泰将

 Wednesday尾川です。今回は遠征船やキハダ船で時どき見かけるマンボウのお話。

 この呑気なマンボウを、あのJAXA(宇宙航空研究開発機構)が研究している……と本誌7/15号の編集後記に書いた手前、そのバイオミメティクスの詳細をお届けしましょう。

 バイオミメティクス(生物模倣)とは、ざっくりいうと地球上の生物の特徴・形質を最先端技術に生かす科学的研究。
 具現化した例として有名なのは、いまや懐かしき「レーザー・レーサー」でしょう。あまりにタイムが出るので公式大会で使用禁止になってしまった英国SPEEDO社の競泳用水着です。
 生地のモデルとなったとされるのがサメ類のザラザラとした「鮫肌」。それはサメの表皮を覆う楯鱗(じゅんりん)と呼ばれる特殊なウロコで、エナメル質の細かな突起が密生しています。
 物理学的、数学的理屈はちんぷんかんぷんですけども、この鮫肌は、フラットなツルツルの素材よりも水や空気の抵抗が減る……らしいのです。
 そういえばレース・カーの塗装もツルツルよりザラザラのほうがラップ・タイムが上がるという話を聞いたことがあるんですけど、今年妙〜にストレート・スピードが速い2019スクーデリアフェラーリF1チームの車体も、これまでの光沢ピカピカではなく、つや消し系……。まさか、鮫肌ボディにしてるんでしょうか?
 それを踏まえて、たとえばシュモクザメを眺めると、なんとなく宇宙的フォースを感じます。

 

 え、不気味? まぁ夏ですし……。さてさて本題のマンボウを、JAXAは何のために研究しているのか? を調べてみますと、JAXAホームページ内にあるpdfファイルの広報誌JAXA航空マガジンFLIGHT PATH、にたどり着きました。
 マンボウは上下に突き出した背ビレと腹ビレを波打つように動かして遊泳し、その尾ビレ(正確には舵鰭。尾ビレと尻ビレが一体化し、まさに「舵」の役割を持つ)を推進力として使うケースはあんまりないようです。
 JAXAはこの特殊な推進メカニズムを「マンボウの骨格」などから学んでいるところで、主として電力で飛ぶ近未来の航空技術の一つに応用できないか? と研究している様子。
 マンボウは表層近くをプカプカのんびり漂うナマケモノ系に見えますが、ときに深海まで潜行するらしいし、本気になればけっこうな速度で泳ぐ……と私は推察しています。というのも1メートル超えのマンボウがハリ掛かりしたシーンを間近で見たことがあり、その強烈なトルクと引きはサメ並みでしたよ!つまり、それだけの推進力を持っているということでしょう。
 マンボウとJAXAについての詳しくは、以下へリンクしてJAXAの広報誌(No.23)を閲覧してみてください。うわぁオモロいっ! と知を刺激されることうけあいです。その中には最新カーボン系素材の話題もあり、釣り人としては「おーっこれって、いつかきっと最新ロッドに採用されるんじゃね?」と、うなるはず。釣具メーカーさんも必見です。

http://www.aero.jaxa.jp/publication/magazine/index.html

 あ。待てよ……。あの~、JAXA研究員の皆さん。
 マンボウもいいけど「カワハギ」を忘れちゃいませんか?

 この魚もまた、背ビレと腹ビレで器用に前進、後退、さらには中立(ホバリング)までするスゴイ魚でございます。バイオミメティクスすべき対象かもしれません。