◎尾川 泰将

 気になる台風も東へズレてくれそうでちょっぴり安心しましたが、もしもに備えて対策だけは万全に。

 Wednesday尾川です。

 さて、たま〜に釣れてくる奇怪な物体シリーズ。ひとまず今回でラストでございます。数年前、相模湾の水深120メートル付近でオニカサゴを釣っていたときに引っ掛かってきたのがコレ。

「なんだよ〜、海藻じゃん!」とガックリくるシーンですが、デッキに転がしてハリを外しているときに気付きました。げっ、上のフサフサしてる部分がジンワリと動いてる……。

 てことはこれって動物?  考えてみると、光合成ができない水深100メートル以上の深場の海底に、海藻などの植物は生えていません。 そこでクーラーボックスに収めて江ノ島水族館に持ち込んでみたところ、

「これはウミユリの仲間ですね」とスタッフの方が即答。

 見た目がユリっぽいので植物みたいな名前なんですが、実際は動物。ウニやヒトデなどの棘皮動物門で、ウミシダの仲間とのことでした。

 調べてみると、ウミユリの祖先は5億年前に遡り、当時は浅い海に生息していたとか。しかし多様な生物との生存競争で追いやられ、棲息域を深場に移したと考えられています。

 ユリの花弁のようなところで微細なプランクトンなどを濾しとって摂取し、なんとまぁウニくらいのゆっくりしたスピードで動くこともできるそうです。

「せっかくお持ちいただいたので頂戴しますが、もう動いていないので水槽展示は無理でしょう。ウミユリは完全に息絶えると体が脆くなってすぐバラバラに崩れてしまうので、急いで保存液に漬け込みますね」

 水族館スタッフに大事そうに抱えられ、館内へ消えたウミユリ。なんだかはかなく、もの悲しい気分になっちゃいましたが、 「そういうのが引っ掛かってくる場所はさ、オニカサゴの穴場なんだ」と船長は断言してました。

 あなたもキテレツな物体を釣り上げたなら、たまにはじっくり観察してみてください。とりわけ深場で掛かってくる物体は世界的にも希有な生物である可能性があります。
 持ち帰るのは私のようなヘンタイだけでしょうが、スマホで撮影して読者ページ「おでこ長屋」へ投稿してくだされば全力で調査いたします。