◎内山高典

 どうも。東京都北区在住、火曜日担当の内山です。
 夏はキンキンに冷えたスポーツドリンク、冬は熱あつのホットコーヒーなど、飲み物がいつでも買える自動販売機。釣り船に乗り込んだ出船前に、飲み物を買うのを忘れた!……なんてときも、ほとんどの港に設置されているので助かります。


 自動販売機設置台数の世界一はアメリカで600万台超え、第2位は約400万台で日本ですが、人口比率では世界一とみられています。


 さて、京浜東北線の王子駅前に、ちょっと変わった自動販売機があります。その名も「北区の自販機」。中をのぞくと、創業明治40年・西尾商店の「亀の子束子」や、東京の老舗ソースメーカー・トキハソースの「生ソース」など北区の名産品が並んでいます。



駅前のサンスクエア2階入口に設置

 

「亀の子束子」は黄色い袋が目印です。


なかには北区の英雄・渋沢栄一の生涯を描いたNHK大河ドラマ「青天を衝け」に便乗した商品もちらほら。


 その渋沢栄一の孫、渋沢敬三は昭和初期に日銀総裁、大蔵大臣を歴任した財界人で、釣り好きの民俗学者としても漁業史の分野で多くの功績を残し、『日本釣漁技術史小考』、『日本魚名集覧』などの著書があります。


 私が北区に住んでいるのも何かの縁。釣りにまつわる渋沢敬三の著書に興味がわき『日本釣漁技術史小考』を購入しました。



『日本釣漁技術史小考』 渋沢敬三著(角川書店)・初版発行/昭和37年11月


 この本には、釣具の意義に始まり、釣漁法の分類と解説、釣鉤、釣糸、テグス、釣竿、ウキ、錘、天秤、餌料などの各側面から、明治前の日本釣漁業技術史が詳記されています。


 じっくり読むのは後日のお楽しみとして、サッと目を通すと「鉤錘竿釣」の項が目にとまりました。




「鉤錘」は、ハリの軸に鉛を直接密着させ、オモリとハリの働きを兼備するもの。古くは天保の『釣客伝』(黒田五柳著)に記述があると紹介されています。


 また、鉤錘のことを東京方面ではテンヤと呼び、鉤錘の竿釣りの代表的なものとして、エビエサを用いた東京湾のクロダイのシャクリ釣りがあげられています。


 近年のエビエサのテンヤ釣りといえば、一つテンヤマダイ。今春は茨城方面や九十九里飯岡などで、3〜4キロ級の大型交じりで好調に釣れています。


『日本釣漁技術史小考』のあとがきに記された、渋沢敬三が釣り上げたマダイの最大は1貫40匁(約3.9キロ)。
 ちなみに私が一つテンヤで釣ったマダイの最大は4.1キロ。北区ゆかりの釣りの大先輩に、ちょっぴり勝っていたのがうれしい火曜日でした。