のんびり、ゆったり 

一つテンヤで楽しむマダイ等

日立の夏はすぐそこ!

フィッシングライター/本誌編集長
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※料金等データは2019年6月のものです。

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今年の一つテンヤマダイは全体的に模様が遅れているようで、6月になってようやく茨城~外房の浅場で好釣果が聞かれるようになった。今年の一つテンヤマダイは全体的に模様が遅れているようで、6月になってようやく茨城~外房の浅場で好釣果が聞かれるようになった。 

テンヤマダイ釣り場としては北に位置する日立エリアもここにきて底潮が温み、マダイを筆頭に様ざまな魚が活発にエサを追っている。

 時折大ダイも出ているが、7月は30メートル以内で中~小ダイが元気にアタってくる時期。加えて、温かい海と冷たい海の魚が交わる茨城ならではの多彩なゲストも魅力。

 ベタ底ではホウボウやカレイ類、カサゴ、ソイやフグ類、宙層にはイナダやヒラマサなどの青物。その中で、本命マダイはどのタナ、どんな誘いで食ってくるのか?

 浅場から手元へ響いてくる多彩なアタリに想像力を働かせつつ、じっくり、のんびり楽しむ。日立の一つテンヤは、もうすぐ夏模様だ。

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エビエサならではの面白さエビエサならではの面白さ
日立沖の一つテンヤマダイ

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  釣り場から西を見ると日立の街並みの背後に山が連なっている。そのひとつが、ここ数年人気急上昇中のパワースポット・神仏のアミューズメントパーク御岩神社。実際に行ってみるとなるほど面白い。ほどなく外国人観光客に知れ渡り、混雑することだろう。

 それはさておき、梅雨の晴れ間に清々しく見える常陸の風景とほぼ同じ大きさの釣り場が、陸に沿うように、今、海底に広がっている。

 そこは根あり、砂礫あり。操舵室のプロッターには赤い航跡とともに大ダイが釣れた印が無数にマークされている。「潮の流れ方がうまい具合に合えば、一日中ポイントの上を流れ続けるし、全部流そうとしたら二日はかかるよ」 これがいわゆる「日立沖」。今日は陸に向かって潮が流れているから、徐々に浅くなって流し直しになるんだよねと、若林正行船長はパラアンカーを出しつつ説明する。

 

カギはタッチ・アンド・ゴー? 

 今年、茨城から房総にかけてマダイ釣りの模様はどこも1カ月近く遅れた。日立沖も例年なら5月下旬には水深30メートルを軸に、それ以内の浅場でもマダイがよく釣れるのだが、上向いたのは6月中旬になってから。 というわけで、梅雨の晴れ間、シケの合間となった6月14日に久慈漁港の釣友丸へ。

 同船者は地元日立の5人グループで、5時半に日立沖の30メートルダチにてパラシュートアンカーを入れて釣りを開始。船は0.6ノット、ゆっくりと流れていく。

 5人のうち4人がテンヤでスタート。最もキャリアの長そうな須藤さんのみタイラバで探って、反応がないとみるやテンヤに替えた。

 根を避けているため根掛かりはほとんどないので積極的にボトムを攻めていく。

 30分ほど沈黙が続くと船長も場所変えの準備、今日は苦戦しそうだぞ……と思ったところで、右ミヨシ2番の吉澤さんが800グラムほどのマダイを釣り上げた。

 釣り方は竿いっぱいの上下動、いわゆる「リフト&フォール」で、テンヤが海底に着いたらすぐに、シュッと誘い上げていた。 つまり、テンヤは海底にチョコン、と着くだけ。いわばタッチ・アンド・ゴーだ。そして、マダイはテンヤを上げた瞬間に食ってきたそうだ。

 ちなみにテンヤはタングステン製の10号。船の流れ方と水深を考えれば5〜6号でも足りるが、重く潮切れのいいテンヤで、メリハリの効いた誘いを入れている。

 流し変えると、5号テンヤで底をたたくように誘っていた須藤さんがアイナメをキャッチ。続いて7号テンヤを少し上げてあまり動かさず、軟調長竿で落ち着かせてアタリを待つ船長がウスメバル、マゾイ、再びウスメバルと連発。

 そして右ミヨシの後藤さんが500グラムほどながら船中2枚目のマダイを上げた。釣り方、テンヤの重さともに隣の吉澤さんと同じリフト&フォールでタッチ・アンド・ゴー。なんだか芸名みたいなカタカナ造語だけど、この方法がマダイに効いていた。

 

魚との対話がテンヤの魅力

 その後もアタリはポツポツと出て、船長はソイ、吉澤さんはホウボウ、右トモ寄りで釣る加倉井さんはムシガレイと、テンヤならでは、というか、常磐の海らしい魚たちが釣れてくる。

 本命のアタリはちょっと遠いが、一つテンヤならではの面白い展開だ。

 まず、底か、やや上か。止めるか、動かすか……、どうすればアタリを出させることができるかを探る。

 アタリがきたら、次はその主がどんな魚なのか……。底ならカレイ、やや上ならメバル、その中から、マダイに近づく答えを探り「マダイっぽい」アタリが出た誘い、タナを絞り込んでいく。

 9時を過ぎると0.8〜1ノットと、船がやや加速した。同時に底からやや上ではゴマフグやイナダといった回遊性の魚が掛かるようになる。

 表面海水温は17度。常磐の海ではマダイの食いが立つのに十分な温かさだが、一時ほどではないものの、相変わらず冷たい底潮が停滞しているのか、なかなか本命の食いが立たない。

 いわゆる二枚潮で、上は温かく速い潮、下は冷たく動かぬ潮、というイメージだ。

 流し変えのたびにタイラバを投入して探る須藤さんは、底から数メートルで巻きが重くなる、ここが境目ではないかと言う。試しにタイラバを入れてみると、なるほど、確かに重さが毎回変わる。

 そんな二枚潮でも、チャンスは必ず訪れる。小さいながらも加倉井さんが本命を追加(これもリフト&フォールのタッチ・アンド・ゴー)した後、船長が良型マダイとおぼしきを掛けた。

 底から1メートルほど上げて止めていたところアタったそうだが、合わせ切れていないと不安そう。そんな予感は的中するもので、フワッと外れてしまうのだった。

 その直後、加倉井さんにも良型マダイらしきが掛かるが、同じく外れてしまう。考えられる理由は、食いが浅いことだろうか……。

 アタリが遠のいて迎えた沖揚がり直前、ここまで一番よくアタリを出していた須藤さんがようやくマダイをキャッチした。聞くと、タイラバでアタリが出て掛からなかったのでテンヤに替え、リフト&フォールの途中で食わせた。

 アタリがないとつい、止めて待ちたくなるし、それが正解のこともあるが、今日は動かしているときのほうがマダイが反応し、食い込みもよかったようだ。

 本命の数字だけを見れば決して多くはなかったが、内容としては実に味わい深い釣り。釣法や道具が変われど、エビエサのマダイ釣りの面白味が一つテンヤを通して広まり、受け継がれていると実感するのは、こういう日だ。

 本誌が出るころには、広大な日立沖がさらに活気づいているはず。ぜひ、穏やかな海での大流しで、魚たちとの対話を楽しんでほしい。


 茨城県日立久慈漁港
釣友丸
☎0294・22・7436

P58 59.05

▶料金=マダイ乗合(一つテンヤ、タイラバ)1人1万円(エサ、氷付き)
▶備考=予約乗合、ほかルアー青物へも

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