◉沖藤武彦
ども。台風9号、10号、11号ですって、トリオ漫才かよっと台風予報にひとりツッコミして、ああ、歳くったなあと痛感する8月6日。思えばもう76回目の原爆投下の日、静かに合掌、黙祷する実家が広島の沖藤です。
原爆や終戦と台風は一見無関係に思われるかもしれませんが、実は強く結びついています。ワタクシがそのことを知ったのは、柳田邦男さんの『空白の天気図』を読んだのが直接のきっかけでした。
『空白の天気図』柳田邦男
ニュースなどで過去に被害の大きかった台風として引き合いに出される「枕崎台風」は死者・行方不明者3576人にのぼった昭和の3大台風のひとつ。この枕崎台風は、終戦から約1月後の、昭和20年9月17に上陸しています。
上陸地の九州地方全体の犠牲者は442人。
広島県は2012人。
このことに疑問を抱いた柳田邦男さんは、この枕崎台風を「戦争の時代と戦後史との接点にある」事件として、「原子爆弾による殺戮と台風による災害という二重苦の中で、人びとがどのように生きあるいは死んで行ったのか」取材を始めます。
物語は数多くの関係者の証言、中でも広島地方気象台の台員たちの奮闘に焦点を合わせ、この災害のディテールを構築。
そして枕崎台風で広島県で2012人もの犠牲者が出た背景に、戦争、原爆投下が引き起こした「台風の予報と避難ができなかった」状況、つまり「空白の天気図」へ至った経緯が明らかにされていきます。
それは気象・災害予報が人命や社会を守ることに、いかに大きな役割を果たしているのか認識させられると同時に、必死に働く人々の職責や知識や良心や人生まで、あらゆるものを簡単に吹き飛ばす戦争の不条理を痛感させられるものでした。
『空白の天気図』は気象予報、台風災害のすぐれたノンフィクションであると同時に、原爆と戦争を扱った戦争文学として、後世に受け継がれるべき名著で、事実を最短距離で伝える文章は、文庫版で400ページを超える長編をズンズン、映画のような推進力を持って進んでいきます。
台風予報はどこで見る?
さて。その気象予報、台風の進路・規模予報は現在、様ざまな手段で知ることができます。
最も一般的なのがテレビ。とくにNHKの通称「7時の天気予報」や台風関連の情報は、年齢が高くなるほど視聴者が増えます。
▲これは朝の予報ですが、やっぱり見ますよね
で、一般の人に比べ気象予報にビンカンな釣り人の多くが利用しているのが気象予報サイト。
無料で利用できるものでは
GPV気象予報
GPVとは気象庁や米国海洋大気局の気象予測モデルをスーパーコンピュータで計算した予測値で、264時間予報と、より精度の高い39時間予報が表示されます。日本沿岸の細かい波、風の情報はGPV、という人も多いのでは?
Windy
サクサク動き、風、波、雨、雲など見やすいアニメーションと長期予報が特長。現在、釣り人に最も人気のある気象サイトといえばこれでしょう。
米国国立気象局、ヨーロッパ中期予報センター、バーゼル大学、米国海洋大気庁、国立環境予報センターほか民間企業のデータなどをもとにつくられています。
https://www.windy.com
GPVとWindyおすすめの見方
ちょっとスクロールして戻って見てほしいのですが、ここに紹介しているGPVとWindyの画像は、ともに8月8日8時の予報。
進路や速度の予測にやや違いがあり、異なる予報になっていますが、台風予報は多くの場合、時間が進むにつれ、つまり、日本に接近するにつれて日本主体のGPVと、全球規模のWindyの予報が一致していきます。
そのタイミングはまちまちですが、進路、時間が一致することが多いのは2日~1日前ほど。このタイミングで、予想がつかない、あるいは荒天と判断したら、予定をキャンセルして防災モードに切り替えます。
JTWC joint typhoon warning center
そして台風といえばJTWCの情報を確認する釣り人も多いはず。これは米国海軍と空軍がハワイに設置した米国国防総省の機関で、太平洋一帯の熱帯低気圧から台風まで、精緻に予測しています。
進路予想などを見る際には、ハワイとの時差、6時間を計算する必要がありますが、個人的な経験から、JTWCは結構、当たっています。ただ、米軍が作戦行動に映るとアクセスできなくなることがあります。
https://www.metoc.navy.mil/jtwc/jtwc.html
気象庁のサイトがイチオシの理由
さて、台風予測といえば気象庁も黙っていません。前期の『空白の天気図』でも証言が残されていますが、日本の気象予報士の勤勉さ、職責への忠誠心や志は受け継がれていると信じましょう。
で、こちらが現在の気象庁のサイト(スマホ版)
https://www.jma.go.jp/jma/index.html
で、こちらが現在の気象庁のサイト(スマホ版)。
予報、実況だけでなく、各種防災情報が見やすく配置されて、どれもサクサク動きます。えらい!
台風の進路予想やアメダス、雨雲レーダーも即、表示。
なかでもキキクルは、近年増加している洪水、高潮、土砂災害において、いち早く状況を確認すべく作られたコンテンツ。
避難など、各種情報も見やすく表示されます。
気がつけば、この雨やばくないか? と思ったらスマホで気象庁で、自分がいる場所の状況を確認してみましょう。
重ねるハザードマップ
こちらは3月にも紹介した、各種ハザードマップや避難所情報を一括検索、表示できる国交省運営のサイト。
https://disaportal.gsi.go.jp/maps/?ll=35.869021,139.55658&z=8&base=pale&vs=c1j0l0u0
気象庁の「キキクル」と国交相の「重ねるハザードマップ」は、いつでもアクセスできるよう、ホーム画面に設定、または、避難所情報などを画像、プリントなどして、保存しておきましょう。
さて。
これら気象予報が気象衛星やレーダーで得た情報を国境を超えて共同利用することで飛躍的に発展し、便利になってきたことは、専門家でなくとも想像できるはず。
簡単に平和という言葉に帰結させていいものか逡巡しますが、あえて言えば、平和だからこそ、我われは台風予測を何種類も見て検討し、対策を立て、身を守ることができます。
それでも手が届かず、不幸にも被害に遭われてしまう人を1人でも減らすため、気象庁や国交省は日々アップデートを繰り返している、そう信じたいものです。
話は冒頭の『空白の天気図』に戻りますが、気象予報は人の命と社会を守る上で非常に重要で、かつ、平和であることがその土台にあります。
コロナやオリンピックでかまびすしい今日このごろですが、我われが幸せに釣りを楽しんでいる今日の日本が歩んできた道を、年に幾度かは振り返り、合掌したいものです。