◎尾川 泰将

 Wednesday尾川です。
 いよいよサバが増えてきましたね。たくさん釣れるせいで外道扱いになってしまうことも多く、釣れたそばからリリースしてしまう人もいることでしょう。しかし、よーく吟味してからリリースしないと、それこそ本命よりもおいしい魚を逃してしまうかもしれません。

 思い出すのは駆け出しの記者のころ、6〜7月にアジ釣り取材へ行ったときのこと。嫌になるほどサバが交じるので、うんざりしながらサバをリリースしまくっておりました。とそこへ、
「記者さん、そういう太ったサバは捨てないで食べてみなよ」
 船長に言われて持ち帰ったそのサバは、大きなゴマサバ。
 当時はマサバが一番と信じていたので全く期待せず、とりあえず塩を振って焼きサバに。どうせパサパサだろうとつまんだとたん「うまっ」。この季節に釣れる大きなゴマサバは美味なのだと、初めて知った瞬間でした。

 その後しばらくして目にした資料が、有名な「松輪サバ」の主な漁期とサバの種類。それによれば5〜7月はゴマサバを、8〜10月はマサバを中心に漁獲……とあるのです。
 もちろん秋のマサバのほうが断然価値は高い。ところが初夏〜梅雨時は、産卵後で脂質が抜けたマサバより、季節による脂質の変動が少ないという=味が安定しているゴマサバのほうがうまいという逆転現象が起きるらしく、それを踏まえて漁が行われていたのです。
 マサバ信奉者だった私にとっては衝撃的な事実。というか無知だっただけのことですけど。

 そんなゴマサバの旬もお盆を境に終期を迎え、代わって真打ちマサバが一気においしさを増していきます。こと東京湾口部〜内湾のマサバは8月中旬〜9月に驚くべきスピードで脂質を増し、尾ビレやボディが黄色味がかった極上の「松輪サバ」に育つ、かなり特別な海域だとか。つまり今からこの海域で釣れるマサバは決して粗末してはなりません、間違いなく価値ある1本ですから。

 ところで、この模様を見てマサバかゴマサバか判断できる人はいるでしょうか? というわけで来週も引き続きサバの話題を取り上げてみます。