令和3年8月20日、太平洋広域漁業調整委員会(水産庁)より、遊漁によるクロマグロ採捕禁止措置の実施が公示された。
 海域はわが国の全海域、期間は令和3年8月21日より令和4年5月31日まで。遊漁において掛かったクロマグロはすべてリリース、悪質な違反者に対しては指示に従うよう命令が出され、従わない場合は罰則が適用される。



 水産庁によると、今回の措置は漁獲可能量(TAC)制度に基づくクロマグロの資源管理の枠組みに支障をきたすおそれがあると認められたため。
 具体的には、本年度の国のクロマグロ大型魚(30キログラム以上)漁獲可能量は5961.9トンで、予備ともいえる留保枠が81.7 トン。そのうち20トン(※)が遊漁への対応へあてられているのだが、採捕報告により把握されたものを含め、遊漁による採捕量がそれを上回るおそれがあると判断された。ちなみに留保枠のうち50トン程度は漁業における突発的な漁獲の積み上がりへ、10トン程度は試験研究等による漁獲への充当分。



 公示に先立ち、7月末から8月上旬に水産庁にて行われた広域漁業調整委員会では、釣り人の団体が参考人として参加、クロマグロ釣りにおける遊漁者の立場や現状などを説明した。
 本誌が傍聴した第38回日本海九州西広域漁業調整委員会では、一般社団法人全日本釣り団体協議会の木村陽輔専務理事に続き、JGFA(NPO法人ジャパンゲームフィッシュ協会)の森聡之・釣魚保全委員が遊漁における1人1尾のバッグリミットの有意性と資源保護への取り組みを説明、JSA(一般社団日本スポーツフィッシング協会)桜井駿理事はそれに加えリリースの普及と向上による持続的な資源管理とルールの策定、遊漁がもたらしている地域経済への貢献・影響の大きさなど資料を使いながら多角的に説明した。
 広範囲を回遊する太平洋クロマグロは、中部太平洋まぐろ類委員会での国際合意に基づき資源管理が行われている。漁業者からは厳しい意見も出たものの、国内での分布や利用等の調整を行う広域漁業調整委員会にて、遊漁者の立場、地域経済への貢献などの声が初めて全国の漁業者の各代表に届けられたことは画期的と言える。

 ちなみに、決定権のある調整委員には遊漁関係者はいない。

 



 なお、来年度、6月1日以降の遊漁によるクロマグロ採捕の取り扱いについては、来年3月に開催される、各海域の広域漁業調整委員会で決定される。
 それまでに再び遊漁者と遊漁船業者の意見が述べられ、協議され、反映されることを期待したい。

 

◎水産庁では釣り人専門官をはじめ遊漁担当者が随時情報を報告している。公式の文書などはホームページでご覧になれます。

 

※本年度のクロマグロの漁獲可能量の総合計約1万トンのうち20トンは0.2パーセントにすぎないが、これは正式に分配された数字ではなく「対応可能」な量。現時点ではTACの分配枠に遊漁は含まれていない。

 

 

 

▲7月30日に行われた 第38回日本海九州西広域漁業調整委員会の様子。オンラインにて傍聴。人数に上限はあるが一般も傍聴可能。