◎沖藤武彦

 

 

ども。水族館に行くと必ずイワシの群泳水槽に張り付いて写真と動画を撮りまくる典型的な釣りオヤジ・沖藤です。へへへ。

 

 

水族館では主にマイワシが生態展示されているのですが、泳ぐ姿を見て「なるほどウマそうだよなあ」とか「体側の七つ星より、やっぱり〝目〟が目立つんじゃないか?」とか、「尻ビレに孫バリを打つと泳ぎが悪くなるよな」とか、見続けちゃいます。

 

 

 

▲こうやって水槽をガン見していると、たまに同じようにイワシに執着しているオジサンと目が合ったりします。たぶん、お互いに同類だと思ってるんだろうなあ……

 

思い起こせば昭和の後半、マイワシは漁獲減少で高級魚になった、なんて話をよく聞きました。

 

 

テンヤタチウオのエサを調達している釣り人はご存じでしょうが、あれから一転、現在、マイワシの漁獲は好調で、簡単に入手できます。

 

 

ちなみに、マイワシの県別漁獲量1位は茨城県で全国の37.2パーセント、2位は千葉県で9.5パーセントを占めています(2019年)。

 

 

マイワシは主に水深30メートル以浅を回遊するそうで、これから冬にかけて太平洋岸を南下。茨城、千葉のヒラメ釣りゴールデンラインは、マイワシの本場でもあるんですね。

 

 

2021〜2022年も

ヒラメが好調のはず、

と考える理由

 

これから12月にかけて解禁していくヒラメは、マイワシと密接に関係していると言われます。

 

 

話はちょっと回り道しますが、ヒラメの当歳魚の多くは水深30メートル以内で生活し、約1年で体長30センチほどに成長、2年で40センチ以上、体重1キロに成長すると、海水温20度以下を求めて「深場と浅場を行き来する」ようになることが、アーカイバルタグによる追跡調査などで分かっています。

 

 

小さなヒラメは浅場で生活。

 

 

大きなヒラメは海水温20度以下を求めて移動。

 

 

つまり、茨城や千葉の沿岸の浅場は、6〜11月までは20度を超えるため、良型ヒラメの多くは深い場所で生活している、あるいは、北の海にいると推測されます。

 

 

これが秋風が吹き、冬に向けて徐々に海水温が下がってくるとヒラメが浅場に上がってくるそうですが、ちょうどそのころ、都合よくマイワシが回遊、春からの産卵に備えてマイワシを食べまくると太って身が厚くなる、つまり……

 

 

釣っても食べても旬の「寒ビラメ」になる、というわけです。

 

 

これは茨城でも、外房でも、釣り人の皆さんなら実感があるはず。

 

 

一般に関東沿岸のヒラメ釣りは暖かい時期や秋はソゲと呼ばれる小型や1キロ前後が中心で、真冬から春先にかけてが大ビラメの盛期。前記の水温の低下によるヒラメの移動と、マイワシの回遊とも一致しています。

 

 

ちなみに、親潮の影響が強く水温が低い福島や茨城北部では夏〜秋口に大ビラメが釣れますが、これもマイワシ、カタクチイワシの回遊とシンクロしている場所がほとんど。

 

 

また、3〜5月にかけて大型が釣れるのも、産卵期と産卵場所の水深(20〜50メートル)と一致します。

 

 

つまり、マイワシの資源量が好調な今期も、茨城〜外房のヒラメはよく釣れるハズ、と楽観的に予想するわけです。

 

 

サンマ不漁はマイワシのせい?

 

さて、ヒラメにもタチウオにも、もちろん人間にもごちそうのマイワシ好況は喜ばしいこととして、気になるのがここ数年、秋の味覚「サンマ」の不漁が続いていること。

 

 

乱獲や外国船によるEZZギリギリ海域での漁獲攻防など色いろな話が聞かれますが、それらサンマの生息域の変化も含めた不漁、それも歴史的不漁の一因が「マイワシの増加」にあるとする見方もあるそうです。

 

 

マイワシとサンマは同じく動物プランクトンをエサにする北方系の魚。

 

 

つまり競合した結果、マイワシが増加、サンマは沖合に追いやられる「魚種交換(または魚種転換)」が起きているのではないか、と言われています。

 

 

ザックリ言うと、「魚種交換」とはサバ、サンマ、マイワシ、カタクチイワシなど、表層でたくさん獲れる「多獲性浮魚」資源が様ざまな要因で周期的に増減を入れ替えることで、1960年代のマイワシの激減もこれが一因とか。

 

 

だとすると、テンタチわっしょーい! 大ビラメわっしょーい! と、喜んでばかりいられないのかもしれません。

 

 

まあ、心配していてもすぐにどうこうできるわけでないのですが、サンマの不漁は個人的にも実に残念です。

 

 

それというのも、ここ数年は秋になり脂の乗ったサンマが上がり始めると、極上の「サンマの炊き込み飯」を食べさせてくれるお店に行くのが楽しみなんです。

 

 

 

▲土鍋で炊きあげた「YAMATO」の秋刀魚ごはん

 

 

人形町にある炉端焼き店「YAMATO」のコース料理で出していただくのですが、これがもう、自分史上最高においしいサンマ料理かつ炊き込みご飯であり、そのうまさは世界遺産級と信じて疑いません。

 

 

「YAMATO」はミシュラン掲載店ながら決してお高くなく、気さくな店。マスター(モータースポーツファンです)の食材へのこだわりは強く、納得のいくサンマが入らないと、この秋刀魚ごはんが作られることはありません。昨年も、ようやく、ギリギリ作ってくれた感じでした。

 

 

このままサンマがとれず、脂の乗りも香りもいまいちだと、秋の楽しみがなくなりかねます。

 

 

うーむ。サンマたちが食べようとしていたプランクトンは、イワシたちが食っちゃっているのかね……。

 

 

水槽でグルグル回る、ある意味サンマ以上に哀れな水槽のマイワシ動画を眺めつつ、コロナ禍で大変なはずの「YAMATO」へ問い合わせをしてしまう金曜の夜、でした。