◎尾川 泰将

 Wednesday尾川です。
 先日「ボートで1千魚」の取材で、久しぶりにメゴチを数尾釣り上げました(記事は10.01発売の本誌10月15日号に掲載されます)。

 

 外道中の外道、しかも地味な存在とあって、皆さん全く気に留めていないでしょうけど、ここ数年あんまり釣れなくなったんですよ。かつてはキス釣りの最中にイヤになるほど釣れてきて、マゴチ乗合で生きエサとして使うこともよくあリましたが、現況では無理な話。
 ガッチョ、テンコチと呼ばれて美味な食材として親しまれている関西方面でも漁獲量は大幅にダウンしていると聞くので、磯やけなどを引き起こしている海洋環境の何らかの異変が影響しているのかもしれません。

 上の写真はそのメゴチの背ビレ。久しぶりに釣り上げたので、ちょいとつまんで模様を見てみました。お〜っ、やっぱり違う。これすなわち種が違うんですよ。
 気にしていない方がほとんどでしょうが、関東で通称メゴチと読んでいるネズッポ科の仲間は数多くいて、よく観察すると実に面白いのです。同一種であっても、雌雄で背ビレや尻ビレの模様が違い、魚類の先生も悩んでしまう存在。私はまだまだ無理ですけど、現場できちんと見分けることができるようになれば魚博士の称号を個人的にお与えいたします。

 ちなみに左の白地に黒斑の背ビレはネズミゴチの雌、右のまだら模様はトビヌメリの雄。かなりマニアックながら、どの種がどのような海域に多いのかを細かく調査し、その増減を研究していけば学術論文になります。

 え、あのヌメヌメした魚には触りたくもない、すぐにポイだよ!?
 ずばり、それはいけません。良型のメゴチは食材としてもお宝級なんですから。

 

 皮を引いたこの白身の美しさをご覧ください。
 これをしょう油や塩で口にすると、とろける甘みが広がります。また、松葉おろしにして天ぷらにすれば、シロギスをしのぐ逸品に仕上がリます。
 その食感とうま味はメゴチ特有のもので、他魚では味わえないもの。
 たまにしか釣れなくなってしまいましたが、だからこそ食べてみてほしい貴重な小魚なのです。