◎尾川 泰将

 皆様にはできれば食べたくないトラウマになっている魚がいます?

 Wednesday尾川です。

 メジャーどころではサバ。皆様の中にも「サバにあたったことがあるので食べない」という人がいるかもしれません。
 私の場合はマルソウダがダメ。20代のころ初めて食べたらお腹を壊し、おまけに二日間ほどオナラが止まらなくなって困ったんですよ……。

 以来、敬遠し続けている魚です。

↑上下がマルソウダで、真ん中はヒラソウダ

 こうした食あたりは、ヒスタミン食中毒。

 赤身魚にはヒスチジンという物質が多く含まれ、鮮度低下とともに分解されて食あたりを引き起こすヒスタミンに変化します。

 赤身魚の中でもマルソウダはとりわけ鮮度落ちが早いのでヒスタミンが生成されやすく、釣り人の間でも「生食は避けたほうが無難」という意見が多い魚です。

 ところが先日、静岡新聞WEB版の9月18日付に「マルソウダの生食用商品を開発」という記事が。

 西伊豆仁科町の水産漁業者が「漁獲直後に船上で血抜きし、直売所で真空にした切り身をアルコールの急速冷凍機で保管するなど、品質や衛生管理を工夫し開発に成功」とあり、同町の直売所で刺身用として販売されるほか、清水市の寿司店で寿司だねとしても使用されるようです。

 マルソウダのヒスタミンを抑える詳しい方法は企業秘密でしょうけど、魚全般の冷凍技術や流通方法格段に向上していることも相まって、かつての常識は次つぎに覆されつつあるんですねぇ……。

 マルソウダは蕎麦つゆのだしに欠かせない「宗田節」の材料として知られ、実はうまみ成分の塊だとか。握り寿司にするとどんな味なのか気になります。

↑高知県で撮影した宗田節の箱詰め風景。いかにもダシが出そうな色つや

 

 しかしまぁ、釣りの現場でヒスタミンを少しでも抑える作業は「すぐに血を抜いて、内臓を取り、きれいに海水で洗い流して氷水で冷やす」という定番の方法しかありません。どこかの水産研究機関が、クーラーボックスに入れるだけでヒスタミンを抑制する添加剤なんかを開発してくれないかな……。
 それまではソウダの種類を見極めて持ち帰る日々が続きそうです。

 現在、相模湾や駿河湾ではマルソウダとヒラソウダ(こちらは血抜きするだけで安心して食べられます)が入り交じって釣れている様子。
 釣れたてならば、おおむね背中の模様で見分けることができるので参考画像を貼り付けておきます。1キロを超える大きなヒラソウダは本ガツオをしのぐおいしさなので「血抜き&すぐ保冷」で、大切に持ち帰りましょう。