◎尾川 泰将

 Wednesday尾川です。

 ただいま発売中の本誌1月15日号、そのボート釣りコーナーは「目指せボートで1千種」の最終回。計8回の取材で1000種の魚を釣ろうとぶち上げてスタートし、魚類博士の宮崎佑介さんと一緒にあちこちのボート釣り場へ出撃しました。

 

 ときに50馬力の船外機ボートを駆って挑んだものの、総合結果は100種にも到達しない不甲斐なさ。真剣にいろんな魚を釣るのは非常にハードルが高いと痛感した次第です。
 それでも並べてみると、とっても賑やか。本誌でも釣れた魚をモノクロページで掲載してありますが、ここでは改めてカラーの魚体を眺めて楽しんでみようと思います。

 

 

 

 

 第1回目と第2回目で釣れた魚です。相模湾沿岸の浅い砂地と根周りを丹念に探って、16種をゲット。
 おなじみの魚が並んでいますが、この中で目立つのはアカハタ。昔は相模湾でさほど見かけなかったのに、海水温上昇などによる環境の変化で今やどこでも釣れる魚になりました。
 ちょっと心配なのは、アカハタの勢力が拡大し過ぎると、同じ場所に住むカサゴやメバルが減ってしまうんじゃないか? という点。食べるエサはほぼ同じであり、その奪い合いとなれば体が大きい根魚のほうが有利になりますから……。

 

 これは第3回目と第4回目で釣れた魚で、ドン深の海底地形を擁する駿河湾に出向いて、主に水深50〜200メートルの少し深場をリサーチ。この水深になると種も多様、24魚種を確保できました。
 特筆すべきは沼津沖で釣れたトサヒメコダイという赤い小魚。アマダイでよく釣れるヒメコダイの仲間ですが、トサ(土佐)という名が付くように、西日本の太平洋側で確認されている南方種。その北限記録が、駿河湾まで一気に北上した瞬間でした。要因はやはり温暖化? 

 

 

 第5回目と第6回目は、西伊豆と東伊豆へ。実際はこの2倍近い魚種が釣れているんですけど、第1回〜第4回目に釣れた魚は除外しなければなりません。
「いくら釣っても種類が増えない……」というジレンマを感じ始めたころで、思いっきり浅場の岩礁帯でベラやスズメダイを狙い、なんとか釣れる種を増やした時期でした。
 ここで感じたのは、やはり南方種のハタ類が増えていること。代表格はアカハタよりも先に(10年くらい前)増加して、すっかり関東各地に定着したオオモンハタの隆盛ぶり。さらに、東伊豆でホウセキハタが釣れたのも驚きでした。本種も四国以南が主な生息域とされてきたからです。

 

 

 

 そして第7回目と第8回目(最終回)は正直なところ青息吐息。

 この倍以上の魚種を釣っているものの、これまで釣れた魚を除くととわずか9種にとどまってしまう有り様で、トータル63種にてThe Endとなりました……。

 

 本シリーズ後半は、立派なマダイを釣ろうがイズカサゴを釣ろうが「うーん、残念。もう釣ってます」と肩を落とす奇妙な釣りと化し、釣り人としては精神衛生上よろしくない雰囲気になってしまいましたねぇ。


 まあそれも、こんな企画を立ててしまった自分のせいなのですが。

 けれどもおかげさまで「ちぇっ、外道か」と小魚をポイ捨てすることはなくなりました。まじまじと眺めることで「実は珍魚だった」という可能性も十二分にあるからです。

 

 ここ数年の関東〜東海沿岸は、温暖化や黒潮大蛇行などの影響で南方系のレアな魚と出あえる確率が間違いなく高まっています。皆さんもそんな魚たちとの一期一会を、ぜひ釣りの楽しみの一つにしてください。

 

 その一つ一つを共有すれば生物相の変化が分かり、大きく変わりつつある海の環境を知る貴重なデータとなるはずです。