◉ども。沖藤です。今年もサンマの記録的な不漁がニュースになるたび、海流や海水温の変化でサンマが北に追いやられている、と説明されたりしますが、その海流ってどうなってるのよ? と思いますよね。

 

 

仕事柄、海流だの海水温だのを見ることが多いのですが、かれこれ6年間以上続く黒潮大蛇行のせいもあり、黒潮がちょっと変な動きをしていてもさほど気にしていなかったんです。

 

 

ところがですよ、サンマ不漁に先立って、今年、三陸の越喜来でケンサキイカが爆釣したり、鹿島のマルイカが史上最高レベルで真夏から釣れていることから、さすがに何かが違うと思い、魚類研究者の工藤孝浩さんに聞いたところ、

 

 

「鹿島のマルイカは以前より釣れていたわけですから今後も続く可能性が高いと思われますが、さすがに越喜来のケンサキイカは黒潮が引き起こした特異な現象と見ていいでしょう」

 

 

とのことで、

 

 

「今年はとくに黒潮の分岐流が北に突き上げる傾向が見られるのですが、その黒潮が東にカーブする際、急激に曲がると暖流がちぎれるように北の海に残されることがあります。ちょうど、冷たい海に浮かぶ島のように、三陸へ流れ、生物を運んだ。そのひとつが、ケンサキイカだったと推察されます」

 

 

もっと色いろ聞きたかったのですが、今回はここまでとして、じゃあ、黒潮がどう動いていたのか、「JAXAひまわりモニタ 海中天気予報」を見て、驚いたってわけです。

 

 

まず、これは今年の1月1日の黒潮の動きと海面水温。

 

 

JAXAひまわりモニタ 海中天気予報 より転載

 

 

黒潮が犬吠埼沖から急激に突き上げているのが分かります。本来、房総半島から東へ向かう黒潮の流れは「黒潮続流」と呼ばれるのですが、こうなるともはや続流と言うより沿岸を北に進む分岐流。その後もズンズン北へ進みます。

 

 

で、こちらが7月1日の黒潮の動きと海面水温。

 

 

JAXAひまわりモニタ 海中天気予報 より転載

 

 

黒潮の分岐流は沿岸に寄りつつ、ズガーンと突き上げて三陸沖へ。仙台湾の北に、工藤先生の言う、黒潮からちぎれた暖流(渦)の影響らしきが見えます。

 

 

そして越喜来でケンサキが釣れ盛った8月1日の黒潮の動きと海面水温はというと……

 

 

JAXAひまわりモニタ 海中天気予報 より転載

 

 

黒潮の分岐流は速度こそ弱めたもののさらに北上、三陸沿岸と下北半島に暖流の渦が現れ、仙台湾で表面海水温26度、釜石で24度を超えています。

 

 

このときマルイカが爆釣し始めた鹿島沖と、三陸がほぼ同じ海水温なんですね。

 

 

わたくしは関東に住んでいますからそこまで実感がありませんでしたが、黒潮分岐流の北上はかなり異常な現象だったといえそう。前出の工藤先生も「アブノーマルな現象」とおっしゃっていました。

 

 

ちなみに「JAXAひまわりモニタ 海中天気予報」は1週間先まで予報を見られるのですが、9月22日、秋彼岸のころの予測を見ると、黒潮分岐流の北進は一段落しているようです。

 

 

JAXAひまわりモニタ 海中天気予報 より転載

 

 

とはいえ、海水温は異常なほど高いし、黒潮は遠州灘、南伊豆、そして房総半島にぶち当たっています。

 

 

同サイトでは2019年からの水深100、200、400メートルの水温データも見られるのですが(黒潮の定義は水深100mで水温15度以上、だったはずなので確認しやすい)、それを見ていくともう、関東の海は伊豆諸島や西日本どころか、沖縄化しちゃうんじゃないかと思うほど。

 

 

南房で10kgオーバーのカンパチが釣れるのも、ある意味では納得です。いやはや。

 

 

というわけで、『隔週刊つり情報』10月1日号は、変わりゆく沖釣りの「今」をたっぷり、現場よりお届けしております。

 

 

 

アオリイカ、今年はいいような気がするんだよなあ……。