『隔週刊つり情報』発行人/沖藤武彦
令和5年12月末に公布される「船舶安全法施行規則等の一部改正」において、海域など条件により遊漁船にも
「法定無線設置」
「非常用位置等発進装置(EPIRB等)」
「改良型いかだの搭載」
が義務化されます。詳しくは
【報告】あなたの海域は必要か?遊漁船への救命いかだ義務化等を分かりやすくまとめてみた。11月12日編集日誌号外その①
https://mobile.tj-web.jp/news/1959-2023-11-12-03-44-34
をご参照いただければと思います。
今回の国交省による「船舶安全法施行規則等の一部改正」において、我われや遊漁船業者が問題点としていることのいきさつについては
急告‼︎遊漁船へ救命いかだ等の搭載が義務化される?(当事者不在の委員会提言を元に12月末に公布か)2023年11月3日編集日誌号外
https://mobile.tj-web.jp/news/1954-12-2
なぜ国交省は補助金の案内を送り付けておきながら「遊漁船には補助金を出さない」と言うのか。11月12日編集日誌号外その②
https://mobile.tj-web.jp/news/1960-11-12
をお読みいただけたらと思います。
その中で、我われと遊漁船業者が問題視しているのが改良型救命いかだが、安全面においても遊漁船の実情に即しているのか、ということ。
国交省の資料によれば、現在購入可能な、避難する際に水に入らずに移動できる救命いかだはこちらです
※国交省資料より
はい。巨大です。冗談ではなく、オフィシャルな資料です。
これを遊漁船に積むって無理だろ! とだれもが思います。
で、出てくるのがこちら。
※国交省資料より
今後新たに販売。つまり、これらすべて、現時点では
販売されていないものです。
まだ発売されていないものを基準に国交省は義務化を進めているわけです。
遊漁船の改良型救命いかだの義務化は、適用が令和7年4月以降の船検となっていますが、公布から1年以上の猶予があるのは、
改良型救命いかだができていないからなのです。
そもそも、なぜ、できてもいない救命いかだを遊漁船に積ませることを急ぐのか、理解できません。
少なくとも、すでに販売されている救命いかだを
カズワンのような事故が起きぬよう
遊覧船に義務化して、搭載することが第一義のはず。
しかも、一番小さなバッグ式でも推定40kg以上ある、これら改良型救命いかだを、
遊漁船のどこに積むのか、
事故の際、船長1人でできるのか、
船のバランスは大丈夫なのか、
遊漁船を対象に
一切、検討されていません。
横須賀の造船所の社長も、多くの点で不安を口にしています。
少なくとも、遊漁船に積むのであれば、その船体(バランス・機関など)と、人間の動きと、専門家を交えて検討すべき、というか、
人命を本当に大切にするなら、やっていて当たり前のことをやっていないのです。
そしてこのコストです。
※国交省資料より
ここに「補助金」と出ていますが、
遊漁船に補助金は出ません。
ですから、上の救命いかだを購入するには280万円かかり、ランニングコストが加わります。
説明を求めたところ、遊漁船を管轄する水産庁が担当で、現在5億円を(今さら)財務省に申請しているそうです(望み薄)。
どう考えても、遊漁船の船体、営業形態、事故の特質などを検討し、補助することで、より安全に、事故を防止しようという意図は見えません。
仮に、将来、遊漁船に救命いかだ搭載が義務化となっても、そこに根拠と明確なプロセスがあれば、だれも反対しません。
今回の「雑すぎる」遊漁船へのいかだ省令の適用は、国交省がカズワン事故の原因のひとつ=監督する国が現場を知らなさすぎる=をまったく教訓にしていない、としか思えないのです。
↓パブリックコメントはこちらから
「船舶安全法施行規則等の一部を改正する省令案に関する意見募集について」
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCM1014_CLS&Type=0&Bunya=0000000040&fbclid=IwAR0d0kj-WfdKL2digY-0qHVKYku9SP8kkWKzRHU47JWNiU7NZVmdyQAscBw
「船舶安全法施行規則等の一部改正」について説明会を希望される場合、水産庁の沿岸・遊漁室が窓口となり、国交省とともに説明会を開いていただけるそうです。
問い合わせ 水産庁沿岸・遊漁室
☎︎03・3502・7768