◉つり情報発行人/沖藤武彦

 

 

 はじめに、いかなる場合も人命は最も重いものであり、遊漁船でも当然、すべての物事において優先されるべきものであります。

 

 遊漁船業者は十分承知のうえ安全を最優先し、遊漁船業の適正化に関する法律を遵守し、改正にも積極的に協力してきました。

 

 しかし今回の国交省の「船舶安全法施行規則等の一部改正」は、遊漁船の実情に即しておらず、人命の安全を最優先に考慮した場合でも不条理や矛盾が多く、場合によっては危険が増すことさえ想定されます。

 

 さらに、遊漁船を省令の対象に含むプロセスにおいて、当事者も専門家も不在のまま決定が行われ、周知も行われず、気づかれぬまま公布・施行されようとしています。

 

 人命を第一に考える省令が、こんな乱暴なやり方で施行されていいわけがありません。

 

 これが「いかだ省令」の見直しと再検討を要望する根拠です。

 

 

 

「船舶安全法施行規則等の一部改正」いわゆる「いかだ省令」について、12月21日にフィッシング会館にて、国交省と遊漁船業者・日本釣振興会・日本釣りジャーナリスト協議会による意見交換会が行われました。

 

 その席で国交省担当者より、国民から予想以上の数のパブリックコメントをいただき、現在整理している。ついては

 

 

「年内の公布は延期したい」

 

 

 との返答がありました。これは一見よろこばしいことですが、昨日の意見交換会の場では、令和6年4月以降の施行について延期するかは未定。つまり、年末の公布は延ばすけど、施行は延ばすとは言ってないよ、という返答でした。

 

 それが一夜明けて本日、国交省ホームページにて

 

「船舶安全法施行規則等の一部改正」(いわゆる「いかだ省令」)の

 

適用日について検討中

 

 と発表されました。つまり、令和7年の遊漁船への施行日も再検討する、ということ。すなわち、遊漁船への省令の施行は

 

当面の間、延期される

 

ということだそうです(確認済み)。理由は

 

パブリックコメントや一部製品の開発状況を踏まえ、(国交省ホームページより)

 

 とのこと。

 

 つまり、パブリックコメントを入れた皆さんの意見と、人命を優先するなら現場を見て実情に即した安全策を行うべきだと抗議の声を上げた遊漁船業者の声が届いた結果といえます。

 3本セットの各項目はこのとおり(赤字は沖藤記入)

 

 

 

国交省ホームページより
https://www.mlit.go.jp/maritime/maritime_mn6_000021.html

 

 とはいえ、これは当事者不在で不条理に進められた省令を一度止めて

 

議論をおこなうための

 

スタートラインに立つ

 

準備ができた

 

 ぐらいの段階であると私は考えます。とはいえしかし、もし、みなさんが声を上げなければ、

 

「日本はこんなめちゃくちゃなやり方が通る国なんですか(意見交換会での船長の言葉)」と、絶望したままになっていたはず。小さな穴を開けたことは間違いありません。

 

 肝心なのはここからです。

 

 昨日の意見交換会でも、遊漁船船長より、①法定無線設備から携帯電話を除外、②業務用無線設備等の導入促進、③改良型救命いかだ等の積付けの義務化・早期搭載促進の、3本セットが、

 

 いかに現場に即していないか、また、遊漁船に適応される決定プロセスにおいて、遊漁船の当事者、専門家がいないまま進めたこと、そして何より、周知がされぬまま(国交省は周知したと言っていますが)、パブリックコメント直前まで進めたプロセスの明確な説明を要求する声が上がっています。

 

 

 また、19日に遊漁船業者・日本釣振興会・日本釣りジャーナリスト協議会が、「船舶安全法施行規則等の一部改正」について国交大臣宛に提出した要望書の内容は、

 

人命を重視するのであればこそ

『当事者不在で決められ、

現状に即していない

省令の対象から

遊漁船を外してほしい』

 

(要約・沖藤)

 

 また、昨日は

 

①公布の延期と施行についても延期するのか報告してほしい

 

②省令の対象から遊漁船を外す との要望についての回答

 

③いまだに省令が全国各地の遊漁船に周知されていないのはなぜか? 即刻、周知すべき

 

④遊漁船の船長が一目で分かるよう、経過を可視化してほしい

 

といった要望が国交省担当者へ出されました。

 

その答えは

 

「検討いたします」

 

 すべて、

 

「検討いたします」

 

 もちろん即答はできないのは分かりますが、なんとも歯がゆい会場でした。

 ともあれ、今日、小さくても事態は進展し始めました。

 

 次のステップは上記の返答と対応を含め(たぶん)国交省、水産庁、遊漁業者ほか専門家を交えて、具体的な議論を始めること。

 

 

絶対に、意見は聞きました

 

はい、終わり。

 

にしないことが肝要です。

 

 

 遊漁船船長の中には、専門知識を深くしっかりと勉強している方もいます。

 

 遊漁船という業種と、将来を見据えて妥協しないその姿勢と熱量と知識には頭が下がる思いです。

 

 本誌はよりよい結果へ結びつくよう、引き続き本案件に関わり、意見し、報告していきます。