【「いかだ省令」の見直しを要求する理由】

 

 いかなる場合も人命は最も重いものであり、遊漁船でも当然、すべての物事において優先されるべきものであります。

 

 

 遊漁船事業者は十分承知のうえ安全を最優先し、遊漁船業の適正化に関する法律を遵守、改正にも積極的に協力し、救命胴衣(タイプA)の着用義務化に際しては、適用以前より、利用者負担を軽減し安全性を高めるべく装備拡充に努めている事業者も数多く、海難救助においては日本各地で広範にわたり協力しております。

 

 

 そのうえで、今回の国交省の「船舶安全法施行規則等の一部改正」(いかだ省令)の遊漁船への適用は、遊漁船を省令の対象に含むプロセスにおいて、当事者も専門家も不在のまま決定が行われたものであり、遊漁船の実情に即しておらず、人命の安全を最優先に考慮した場合でも不条理や矛盾が多く、場合によっては危険が増すことさえ想定されるものであるため、見直しを要求するものです。

 

 

 

ここまでの流れと現在地。

 

 

 既報のとおり、昨年12月22日、国土交通省はホームページ上で「船舶安全法施行規則等の一部改正」(いわゆる「いかだ省令」)の適用日について検討中、と発表、令和5年(昨年)12月末の公布と、令和7年(来年)4月からの遊漁船への適用の延期を発表しました。

 

 

 これは遊漁船業者、釣り人などより寄せられたパブリックコメントと、改良型いかだの開発・生産が遅れていることによるもの。

 

 

 延期の目安は「半年~1年間」としながらも、パブリックコメントにより省令の公布や適用が延期、再検討されることは非常に珍しいそうで、国交省海事局安全政策課・船舶安全基準室長の20数年の職歴においても初めてのこと。

 

 

 とはいえ、穿った見方をすれば、そもそも遊漁船へ適用の根拠としてきた改良型救命いかだの開発・製造が遅れるなど、ツッコミどころが多い省令であると同時に、これまで多くの民意=パブリックコメントなど=を反映してこなかったことの証左と言えなくもありません。

 

 

国土交通大臣へ宛てた要望書への、国交省の返答。

 

 

(公財)日本釣振興会、日本釣りジャーナリスト協議会、遊漁船団体連名で12月19日に斉藤鉄夫・国土交通省大臣宛に提出した要望書に対する返答が、2月8日、東京都中央区八丁堀のフィッシング会館にて開催された日本釣りジャーナリスト協議会2月定例会議において行われました。

 

 

 要望書の内容は、

 

「船舶安全法施行規則等の一部改正」の遊漁船への適用を外すこと。

 

 

 その国交省からの答えは、

 

・釣り客を含む一般旅客の安全を確保するため、「安全設備は必要」

 

 

・遊漁船の実態を踏まえ、安全性を確保した上で、「いかだの積み付けを不要とする方法」(いかだの替わりとなる伴走船を運行させる等)「について、遊漁船事業者を含めた検討会を立ち上げ、検討を実施する」。

 

※「 」は国交省資料にて赤字アンダーラインで強調されていた箇所。

 

 というものでした。

 

 

 

遊漁船事業者からは厳しい意見

 

 

 省令の適用延期を発表、遊漁船事業者を含める検討会を立ち上げるとしたものの、

 

 

 遊漁船に「安全設備=いかだを含む3点セット=は必要」、つまり省令から、遊漁船を外すつもりはなく、「いかだの積み付けを不要とする方法」=つまり特例を検討する、という返答に対し、遊漁船業者からは、

 

 

「もっと広く民意を聞くべきだ」

 

 

「決定事項ありきの延期では議論にならない」

 

 

「なぜそこまで、いかだにこだわるのか」

 

 

「特例で除外されても、いつ撤廃されるか分からない」

 

 

「本当に人命を大切に思うなら、まず国が低水温の地域に救命いかだを配布して、その後、法整備するべきでは」

 

 

「検討会をやっても蓋をされるだけでは? 大っぴらな場所で開催して全国の事業者を納得させてほしい」

 

 

 など、厳しい意見が相次ぎました。

 

 

 このように国交省と遊漁船業者らの意見には隔たりを含みつつも、遊漁船事業者を含めた「検討会」を立ち上げ、議論を進めることが発表されました。

 

 

 

遊漁船事業者を含む検討委員会を発足

 

 

 国交省によると、現在のところ検討委員会は4回を予定、委員は10~15名を想定しており、関東、北日本、西日本など各地の遊漁船事業者の参加を希望、日釣振、ジャーナリスト協議会の意見なども取り入れつつ、

 

 

「業界全体の声を拾い上げたい(船舶安全基準室長)」としています。

 

 

 検討委員会発足と回数については、当社・根岸伸之会長より、

 

 

「各地の代表者を集めるなり、話し合いを進めるにしても、委員会を立ち上げる前に、準備委員会を行うべきだ」との慎重な意見も出され、関係機関への連携を呼びかけました。

 

 

 また、現場の船長の意見として、今回の「いかだ省令」(国交省)と、「遊漁船業の適正化に関する法律」(水産庁)の改正を混同している人や地域が多いことが指摘され、より建設的にな議論ととともに、各地に正確に情報を伝え、その意見をとりまとめる場にしなくてはならないとの意見も出されました。

 

     ◇

 

 本件に関する問い合わせ、ならびに説明会等の要望は◉水産庁・遊漁室☎03・3502・7768

 

 

 

ざっくり解説「船舶安全法施行規則等の一部改正」とは?

 

 

 知床で発生したカズワン事故を受けて国土交通省は知床遊覧船事故対策検討員会を発足、事故再発防止と安全性を確保するため、旅客船に「無線機」「発信機」「改良型救命いかだ」の搭載を義務化する省令を制定した(各項目において航行区域や海水温などにより特例が設けられている)。

 当検討会に遊漁船関係者は一切入っておらず、義務化される救命いかだの大きさや重量、運用が遊漁船の船体や営業実態から乖離している点を始め、事業者不在・現場無視、管轄する水産庁から一切の経過報告がなかったことなど決定プロセスを問題視する声が国交省へ数多く寄せられた。

 

 

 

2月8日、日本釣りジャーナリスト協議会2月定例会議において、遊漁船事業者、日釣振出席のもと、国交省からの報告と意見交換が行われた

 

 

国交大臣への要望書に対する返答などが説明された(本文参照)