◎沖藤武彦
「2年前ぐらいですかね。偶然、釣れたのを持ち帰ってお刺身で食べたら、メッチャおいしかったんです」
アカヤガラの名前を聞いた瞬間、目を見開いて話始めるのは東京都の釣り愛好家T・Kさん。
▲こんな大っきいヤガラでした。興奮を隠させないT・Kさん
「そして今年の秋、佐衛美丸さんのカンパチ狙いで、たくさんアカヤガラが釣れていたのを見て、これは行かなくては! と思ったのです」
南房洲ノ崎の佐衛美丸では9月、突如としてアカヤガラが釣れ盛った。
▲佐衛美丸Facebook
「そこで、10月に仲間と仕立てていた江見太夫崎・鈴丸でのハタ・ヒラメ狙いのイワシ泳がせの裏本命を、アカヤガラにしたのです」
なんと、アカヤガラ
攻略法が存在した?
想像に難くない。
T・Kさんはたぶん、マハタとヒラメを釣りたい仲間たちに、無理矢理「ヤガラを釣れよな」「分かってるだろうな、ヤガラを狙うんだぞ」と迫ったのだろう。
その仲間の1人が、ついにアカヤガラの攻略法を見い出したという。
「底から6メートル離して、イワシを泳がせる。これがアカヤガラのタナだったんです!」
▲「ろくメートルですよ!」当日の様子を振り返るT・Kさん
マハタ・ヒラメに目もくれずアカヤガラ狙いに徹した釣友S氏の献身で、この日、船中で6本の、ぶっとくて大きいアカヤガラが上がった。
「こんなですよ、こんな。長さはこれぐらい」
クーラーの画像を見せながら両手を広げるT・Kさん。ちなみに、アカヤガラは最大で2メートルに成長する。
▲クーラーには折り曲げて収納したそうだ
「6本釣れて、6人のメンバー全員にアカヤガラが行き渡ったので、みんな、家に帰って刺身で食べました。全員、これはうまいと大喜びでしたよ!」
満足顔顔のT・Kさん。とはいえ、どう考えても、本命に目もくれず、献身的に高ダナ狙いに徹し4本を釣り上げたS氏の功績であろう。
なぜなら、S氏以外は全員ベタ底狙い(なんだかんだでハタ・ヒラメ狙い)で、ヤガラは2本のみだったのだ。
房総半島で濃密魚影
冬に向け大型増加か?
さてさて。ここからはいつもの調子で。
このアカヤガラ、ワタクシも秋以来、房総方面に行くたびに、と言っていいぐらい、目にしております。
内房保田のライト落とし込みでも
外房勝浦興津のイワシ泳がせ&SLJでも
季節が進むにつれて大型が増えているように感じるぐらい、モノがいいんです。
ちなみに、先週行ってきた八丈島でもアカヤガラは釣れました。
で、島の船長に聞いてみたところ、
「今年は多いよー」
とのこと。もともと伊豆諸島でよく見る魚だったので、全体に増えているのかもしれません。
稚魚の生き残りがよく、大発生になる「卓越年級群」が発生していた可能性もあるのでは? と思われるほどの魚影です。
なお、アカヤガラの産卵期は秋〜冬。詳しいことは分かっていないそうです。
みんな簡単に「超高級魚」
って言うけどさ
で、ですよ。前出のT・Kさんじゃないけれど、アカヤガラの食の評価は「美味」そして市場の評価は「超高級魚」。
見た目もユーモラスですからね、テレビは大喜びで飛び付きます。
「超高級魚」「超高級魚」「超高級魚」
ええい、やかましい! 何でも基準は金か、お前ら! と憤るワケですが(オレだけ?)、ウマいのは確かです。
でも、ですよ。ワタクシはこれまで、伊豆諸島などで何回もアカヤガラの刺身を食べてきましたが、正直言って、シマアジとか、カンパチとか、オナガのほうが、好きでした。
アカヤガラが高級なのは、頭が長く、骨も長ーく入っていて、あまり身が取れない、つまりおいしいのだけど「歩留り」が悪いから、結果として「超高級」になっちゃうだけじゃない? と思っていたわけです。
だから、アカヤガラを超高級魚と言ってありがたがるのはイカガナモノカ。なんて思ったりもしていました。
と、ここまで語尾が過去形なんですね、これが。
その理由は、これ!
▲写真提供:髙橋蒼一郎
興津で釣れた特大アカヤガラの脂の乗りっぷり!
そもそも、爽やかな甘みという、独特な食味の魚なのですが、それに脂がしっかりと濃厚に乗ったらどうなるのだろう……。
もしかすると、冬の房総で釣れる大きなアカヤガラは、別格なのかもしれません。
「これは食べておけばよかった!」
と、後悔。うーむ。
特大アカヤガラと並んで寝る「ヤガラあるある」とか、
特大アカヤガラで縄跳びならぬヤガラ跳びとか、
バカやっててもみんなちゃんと血抜きして持ち帰って、
「スッゲーうまかった!」
って言ってるんだよなあ。
やっぱり、アカヤガラは「超高級魚」なのか……。
というわけで皆さん、今週末、アカヤガラが釣れたらぜひ、食べてみてください。
でも、めっちゃヌルがしつこいから、ウエアに付かないように、気を付けてね!