◉沖藤武彦
ども。スエズ運河の大型コンテナ船の座礁事後や、日米共同声明で尖閣諸島に安保適用が明記されるなど、パッと目に飛び込んでくるニュースで「サプライチェーン」(供給網)という言葉を目にするたび、「エア・サプライ」の「渚の誓い」を思い出す80'S洋楽世代の沖藤です。いやはや。
今思えば「エア・サプライ」の「サプライ」も供給、だったんスねえ。にしても、いまだに活動しているとは恐れ入りました。
それはさておき。
気がつけば新聞もテレビもビジネス英語というか、我われにとっては聞き慣れなれないコトバがわんさか。
新型コロナ以降とくに目(耳)にするようになったのが、前記のサプライチェーンのほか、
アジェンダ(議題 協議事項 予定表)
エビデンス(証拠 根拠)
ガバナンス(統治)
セグメント(部分 区分)
バイアス(先入観 偏り)
コミットメント(約束 誓い)
コンプライアンス(法令遵守)
フェーズ(段階 局面)
リスクヘッジ(危険回避)
インバウンド(主に外国人向け)
マーベル超人の名前みたいですけど、新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身会長の会見を見聞きしていると、学術論文はすべて英語だけに、ある意味当たり前と思うとともに、変な意訳をしないほうがいいのだろうな、などと納得したりもします。
使い方には正誤、色いろあるのでしょうが、外国語が帰化していくのは自然な流れなんでしょうね。
と、いったところで、釣りも英語、外国語がどんどん使われて、帰化しています。というか、和製英語も含め、カタカナ語がたっぷりです。
ルアー、フライ、エサを問わず、釣りや漁業は世界各地で行われていますから、
フィッシング、ロッド、リール、ライン、フック、ベイト、ルアー
などは、共通語と言っていいぐらい浸透しています。
そもそも、ルアーフィッシングやフライフィッシングは外国で育まれてきた文化ですから、解説は英語が基準。フライタイイングブックの内容を説明しようとすれば、前記の尾身会長状態になります。
沖釣りでも英語は自然に使われていて、ワタクシたちも「竿とロッド」、「道糸とライン」、「ハリとフック」、「エサとベイト」など、同じ意味ながら、日本語と英語を混用しています。
このほか、「シンカー」「ボトム」「フッキング」などは、船釣りの現場でもよく使われていて、いずれ混用、一般化していくのではないかと思います。
また、ちょっと飛躍すると、「サミング」、「パーミング」など、日本語で説明するよりも簡潔な用語もあります。
そんな中、沖釣りで最近よく使われる「テンション」は、主に緊張を表す言葉だそうで、「ゼロテンション」などと使うと、正直、ちょっと微妙(以前から英語に詳しい友人に指摘されています)。
え? オマエの雑誌で「ゼロテンション」とか書いてるだろうが! って怒られそうですが、名詞として定着するか、整理されて消えていくか、どちらとも言い難いのが本音。
とはいえ、私も船の上で「ゼロテンション!」って言いますけどね。
と、いったところで。
「深場釣り」と「深海釣り」のはなし。
日本語でも、いや、本誌でも、まだまだ考えなくてはいけない言葉があります。
先日、大先輩より質問があり「深場釣り」の呼び名についてあらためて考えさせられました。
本誌では主に「深場(ふかば)」釣りを使っていて、「深海(しんかい)」を併用しています。
以前より編集部でも何回か俎上にあがることがあったのですが、
【深場】=水深の定義ではなく、場所をさす。水深10メートルでも深場は存在する
【深海】=海洋物理学上は3000メートル以深、生物学では水深200メートル以深
つまり、沖釣りで水深200メートル以深を狙うムツ、キンメ、アコウ、ベニアコウ釣りは、「深場釣り」よりも「深海釣り」のほうが正しい呼び名なのではないか? という話です。
これは実にシンプルな話で、誤解を招かない表記は「深海釣り」です。
とはいえ、議論こそされても、本誌では慣例にしたがい「深場釣り(ふかばつり)」を使っていたのが実情。
先輩としては、全国へ、釣りを知らない人にも発信していくときに、誤解を招く、あるいは通用しない呼び名はおかしいのではないか? とのこと。
これはもっともな話で、まさに正論です。
西日本では「深海釣り」が一般的であり、今や専門誌だけでなくテレビやネットで広く、全国、全世界に配信されますから、統一することはやぶさかではありません。
と、言うわけで『隔週刊つり情報』でも、今後は「深海(しんかい)釣り」を優先して使っていこうと思います。
ただ、関東周辺では今なお「深場釣り」という言葉も使われます。私はこれを批判したり断罪するつもりはありませんし、場合によっては今後も見出しに使うつもりです。
ゼロテンションと同様に、皆が愛着を持って口にする言葉には命があります。
正誤で白黒をつけるだけでなく、言葉の寿命をしっかり見届けるのも、私たちの仕事ではないか、と、思ったりもするのです。
というわけで
「エア・サプライ」の「渚の誓い」の「Out Of Nothing At All」を、いまだに「あぶなしあっおー(意味なし)」としか聞き取れない、空耳アワー世代の沖藤でした。
それでは皆さん、よい週末を!